ボクが見る日向クンの姿は、だいたいが走っている姿だった。力仕事も頭を使うこともすべてこなして、その傍らでみんなの相談を受けている。ボクの相談まで受けるなんて言ってきたときはさすがに言葉を失ってしまった。死神だなんて呼ばれ続けて早10数年、ボクの傍にあんな気軽に近寄ってきた存在なんていただろうか。ボクの傍にいたら死んじゃうよと脅してみても、次そんなこと言ったら怒るぞ、なんて言いながらもうすでに怒っていた。日向クンには嫌われたくないから、ボクがその質問をしたのはただ一回きりだ。嫌われたくないだなんて、言う資格がボクにはないのに。

「日向クン。忙しいのはいいけど、あまり無理な力仕事はしないでよ。ボクに近づいてしまった以上、キミに命の危険が迫ってるかもしれないんだ」
「またそんな話かよ。大丈夫だって言ってるだろ」
「でも、もう笑い事じゃないんだよ」
「大丈夫だよ」

ボクが声をかけるたび、いつも日向クンはそう言って笑ってみせる。その姿が逆にボクをより強い心配で締め付けていることにはおそらく気づいていない。