ルドガーエンド後
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「まるでドラマだな」
湖がぼやりと映し出すのは悲しいくらいにきれいな夕焼けだった。僕は僕としての愛をそこに見出すことすらままならないまま、彼のすっかりくすんだ緑を見つめ続けている。なにもこんなところで僕とこんな話をしなくてもいいじゃないか。当てつけのようなものなんだろうか。…最近僕の心もすっかり汚れてしまったと思う。
「ラルが妊娠した。子供の名前はエルにするつもりだ」
先月ルドガーはついにヴィクトルの名を背負ってしまった。繰り返さないって約束して、と何度も僕らは言った。今になって考えると、そうしている時点で僕らはすでにある程度の事態を予測していたのかもしれない。ラルさんは今買い物のために出掛けているんだそうだ。ついていかずに僕を優先している彼にもひどく腹が立つ。僕の愛はべつに、かつての影へ成り変わったわけではない。今でも彼が好きだ。だからいつまでたっても切り離してくれなかった彼を素直に尊敬できない。迷って傷ついて後悔して、気が付けば僕らは後戻りできないほどこんがらがってしまった。ばかばかしいと誰かに笑ってほしい。
「どうすればいいの」
もはや笑いさえこみ上げてきて、すこし口元を歪めながら僕は彼に問いかける。