現パロっぽい
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「楽しいね」
そう言ってジュードは手に持ったわたがしを軽く振って俺に笑った。眼前に立ち並ぶ屋台の灯りが、ジュードの着ている藍色の浴衣に光を差しているようだ。浮かれすぎて買ったお面を頭につけて横を歩く自分はどう考えても不釣り合いなんだろうなあ、なんて考えてしまう。いや、この光に似合うやつなんて、この世に存在するのだろうか?ふと屋台からいか焼きや焼きそばの香ばしい匂いが漂ってくる。
「食べたいものとかないのか?」
「あはは、もういっぱい食べてるからじゅうぶんだよ」
そういえば、ジュードはさっきたこ焼きやからあげなんかを食べていたっけな。綿菓子も今食べているし。俺がジュードを見ているだけで胸がつかえて物をひとつも口にしていないだけだ。今もそんなに腹が空いているわけではない。
道行く女の子が、きゃあきゃあと楽しげに笑いながら通り過ぎていく。その中の一人が、もうすぐ花火だよ、と大きな声で友達に知らせていた。
「もうすぐ花火だって」
ジュードも聞いていたらしい。俺を振り返って微笑むその目が煌めいている。その際裾を軽く引っ張られて、心の奥がきゅんと鳴いた。こんな些細なことを一生の思い出にしようとする俺のことを、ジュードは気持ち悪いと思うだろうか。

花火が見えやすい場所を探してふらふらと歩きまわった結果、ちょうどよく空が見える丘のような小高い場所にたどりついた。いわゆる穴場というやつなのか、人は周囲に見当たらない。よく漫画なんかで見るシチュエーションそのもので、否が応にも隣を意識してしまう。けれど、ジュードは俺なんかより花火のほうを意識しているようで、空ばかりを熱心に見つめていた。当たり前の話だ。
夏祭りに行こう、電話越しにそう切り出すのに10分かかった。返ってきたのは柔らかい快諾で、思わず大きくガッツポーズを決めた俺を兄は戸惑いながら見ていた。どうしてこんなにジュードを想うのか自分でもわからない。前世から好きだったんじゃないかなんて、そんなおぼろげな始点さえ持ち出しそうになるほどに。
「ジュード」
「うん?」
「俺さ」
ジュードが不思議そうにこっちを見ている。自分でも何を言おうとしているのかはよくわからなかったが、何か重大なことを言葉にしそうになっていた。それを表に出そうと口を開いた瞬間、ぱっと周りが明るくなった。
「あっ」
小さく声をあげたジュードが俺から目を離し、前を向く。花火が始まったようだ。俺もジュードに合わせて前を向き、空にひらく花を見る。きれいに美を飾るそれと、少し遅れて体を響かせる音。ああ、終わるんだな、夏祭り。そう強く実感する。胸に去来するぐちゃぐちゃとした感情の波に押し潰されそうになった。拳を握りしめ、そろりと隣に目を向ける。子供みたいに口を開けて花火にくぎ付けになるその横顔が永遠に傍にあればと、どこかの神に祈った。
「楽しいな」
そう言うと、ジュードはこっちを向いて笑ってくれた。ああ、夏が終わった。


ばっくなんばーさんのわたがしってルドジュじゃん!!と思っていたらいつのまにかこんなものを書いてしまっていた