触れた瞬間のそれは、想像よりは少し控えめな弾力をもって俺の親指の腹を押し返した。分厚さなんかも、思っていた以上に薄い。形を探るように柔く撫でると、薄桃色が発せられる言葉に合わせて小さく動いた。
「な、…何してるんだ?」
ルドガーの表情はまさに困惑の極みともいえるものだった。恐る恐るという風に顎を引いて俺を見つめている。そうだな、不思議だろうさ。
「お前の唇を触ってる」
事実確認の言葉を告げると、目前の緑はまたさらに深い色を滲ませた。柔らかい感触が指に吸いついてくる。すこし開かれた口元から覗く赤に、何か体の奥が痒くなる思いをした。
「いや、なんでこんなこと…」
下唇が固定されていて喋りにくいのか、微妙に舌っ足らずじみて発せられる言葉が耳に響いてくる。ルドガーはそれが嫌なようで、だんだんと眉間に皺を寄せてきている。その様子を観察するのも楽しく、つい返事を先送りにしてしまった。すると、確実に不機嫌になったルドガーが今度は俺を睨みつけてくる。そろそろまずいと頭では思ったが、この感触からすぐに離れようとはどうしても考えられない。
「…楽しそうだな」
「ああ、それはもう」
「なんだそれ…」


ルドガーのプニプニというほどでもない唇をふにふにし隊隊員001の兄さん