血雨の降る夜に外へ出た。水溜まりとなった赤い雨は、僕の服の色さえ変えてゆくようだった。手のひらで雨を受けてみると、そこは際限なく新たな血溜まりを作り続ける。見ろ、と誰に向けて放ちたいのかすらわからないことばが僕の喉元にぶらりと垂れ下がってきた。見ろ、見ろ。これは僕の生の色だ。彼の瞳の色だ。あの人の表の色だ。そして、彼女の血の色だ。歩くたびに服に赤が跳ねた。僕が僕でなくなってゆくような錯覚を覚える。けれど僕は、僕だ。血の色はどこまでも濃い。
部下に促され、血雨をあとにする。血の色はなお僕を襲う。けれど、自分の信じるべき色はしっかりとわかっている。
「アセイラム姫、本日もご機嫌麗しゅう」