うぜえ。ああうぜえ。俺の部屋に、しかも長年愛用しているベッドの上に陣取っている野郎は明らかに害虫のあいつだった。俺が飛び起きたせいでぐちゃぐちゃになった布団は寝ている間にほとんどこの害虫に横取りされていたらしい。どうりで寒いわけだ。よだれを垂らして布団を手繰り寄せるアホ虫は、にへらにへらと間の抜けた笑みを浮かべている。普段は虫ずが走るほど整えられている黒い髪がぼさぼさに跳ねていて、使い古されているんだろう灰色のスウェットは不格好によれていた。気だるげに腹を掻く姿はおっさんそのものだ。容姿端麗も何もあったもんじゃねえ。こいつの身なり褒めてた奴全員に見せてやりたいザマだった。いや、そんなことを言ってる場合でもない気がする。どうしてこいつがここにいるのかを、まずは考えるべきだろう。寝起きのせいで頭がうまく働かないのかそれが二の次になってしまった。