どうにかしてやりたい。そう思った。2人目だった。ずいぶん温情が染み付いたもんだな、と我ながら自虐のように考える。けれど俺ができることなんて雨粒の大きさにも満たない程度の、いやもしかしたらそれ以下のことぐらいなのだ。下手に手助けをして迷惑がられちゃ本末転倒。そんな風に柄にもなく恐がって、幸福を祈るばかりの身の上に降るのは目前の奴の新しい苦悩と負担だった。ああどうにか、なんとか、なにかしてやれないか。見返りなんていまは必要ない。裏切るなんていまはとうていできそうにもない。振り向いてすがってくれれば、それでもう依頼は達成するのだ。ほら早く、頼むよ。
「アルヴィン」
と、振り向くやつはなぜなにどうして、どうあっても笑顔でしかない。それどころか、連れ去ってやろうかなんて口にしたこの俺をあやすかのように優しい雰囲気を纏っている。
「気持ちは嬉しいけど、俺、まだやれそうなんだ」
どこがだよ、マジで。誰にも寄りかからないで生きていけると思ってんのか。バカじゃねえの。俺って本当、バカじゃねえのかな。昔となんにも変わりやしない。せめて「連れ去ってもいいか」と聞いていたら、お前の牙城を崩すことができたんだろうか。なんて考えてしまっているのがもう浅ましいぜ。殴って神様。