思い出した。俺はずっとひとりぼっちだった。

足立透というひとがいる。俺は彼を憎んでいた。あのひとは俺に愛情を返してはくれないから。他のひとなら、きちんと俺の愛情に応えてくれたのに。あのひとだけは、俺のことを他人としてしか見てはくれない。そんな彼が、胸を焦がすほどにずっと憎かった。
彼は俺を可哀想だと言った。最初は何を言っているのかわからなかったが、よくよく聞けばどうやら俺は表面上だけで生きていて俺の世界には自分以外は他人しか存在していないらしい。驚いた。そんなことは知らなかった。俺は自分はみんなのことをきちんと家族のように思っているのだとばかり考えていた。そんなことを知っている彼を、すごい、と思った。俺でさえ知らなかった俺のこと、あなたはとてもよくわかってくれているんですね。そう言うと、彼は「気持ち悪い」と吐き捨てた。

思い出した。そういうことだった。俺ってひとりなんだな。そんな俺を、あなたはわかってくれているんだな。

足立さんは犯人だ。それが覆ることはない。けれど、ひとつだけ覆る事実はある。俺はひとりだという事実だ。それはきっと、今に覆るのだと思う。
「ね、足立さん」
「いつもうっるさいなー君は」