「眼鏡装着後の時間経過が及ぼす眼鏡の標準のずれへのパターン別対処法について話をしよう」

研究所の地下に小さく設けられた二人のスペース内にある簡易ベッドに腰掛けた休憩中のアステルは、俺を見てなんとも急にそう切り出した。精霊について巡らせていた思考をいったん停止し、研究者特有の回りくどい表現を同じ研究者の持つ翻訳スキルを用いて紐解いてみる。結果、意図がいまいち汲み取れず思わず眉を寄せた。なによりもこいつはいつも唐突がすぎる。アステルは俺の様子からこの困惑を感じ取ったらしく、照れ笑いを浮かべながら実は、と聞いてもいない語りを開始した。

「昔から、眼鏡をかけてる人がずれた眼鏡をかけ直す仕草にどきっとするんだよね。フェティシズムってやつかな?」
「……その手の話題か」


リヒターさんもリリーナも眼鏡だからアステル=眼鏡フェチの可能性ありかなという話