迷って迷ってぐるぐる回って、辿り着いたのがキミだったんだろうね、なんてまた電波なことを口走る彼は、今とても上機嫌なようだ。
ボクらは何度人生を始めて、そして終わったんだろうね。そんな哲学的なことを言われても、ただの子供の俺にわかるはずもない。あの博識のチェレンさえ答えなんて知らなさそうなことだし。
そんな難しいことばっかり考えてて頭痛くならないの?と訊いてみると、考え事が趣味なんだ、なんて天才みたいなことをのたまいやがった。あ、実際この人頭いいんだっけ?なんか俺、この人の抜けてるとこばっか見てるから実感湧かないな。
でもね、と彼は言葉を言い放つ。はいなんでございましょうか、こうなりゃあんたの電波トークにとことん付き合ってやる。
『キミと出会うまでは、ボクはこんな考えてもわからない問題はあまり考えなかったんだよ』と、まるでボクの電波はキミのせいだよみたいなことを言われてしまった。なんだよ俺を電波メーカーみたいに言いやがって。
『今まで数式を解くことや、ボクの行動で未来がどう変わるか、そんなことばかりに頭を使っていたんだけど、キミに出会ってからは、どうして人は人をこんなに好きになるのかとか、どうしてキミといるだけで世界が綺麗に見えるんだろうとか、そんなことばっかり考えるようになった』となかなか長い台詞を口にした彼は、その端正な顔に幸せそうな笑みを浮かべた。
えー、うん、つまりこういうことか。もともと電波だった彼に俺が恋を教えてしまったせいで、彼の電波っぷりに拍車をかけてしまったと。ああ、やってしまったかもしれない。
まあでもあれだ、もういいよ、どれだけ電波になっても。あんたも大概俺にべた惚れだけど、俺もあんたにこれでもかってほど惚れてんだから。