「小説が新人賞受賞?」
「うん」

片手間に書いてただけで本業は作家じゃないのにな、と学者である親友のジュードは苦笑を交えてそう言った。すごいことじゃないか、素直に喜べよと肩を叩いてもどこか不服そうに唸るだけだ。新人賞だなんてものすごい快挙だというのに、やはり天才というもののこだわりは一般人の俺ごときにはすんなりと理解できる代物ではないらしい。受賞した小説は想いびとに恋心を伝えられない男がその気持ちを切々と綴っている純文学だという。まだぎりぎり少年の域を抜け出していないジュードだからこそ書けた一作だと、審査員に高い評価を受けたんだそうだ。今度読ませてくれと頼むと、ジュードは顔を赤らめて首を横に振った。恥ずかしいからやめてよ、と縮こまって拒否し続ける。賞まで獲ったんだからそこまで恥ずかしがらなくてもと言うと、君に読まれるから恥ずかしいのだとジュードは呟いた。意外にけちな奴だ。ちなみに、その小説はほぼノンフィクションなのだと俺が知ったのはずいぶん後の話だった。


即興二次小説で一瞬で消したやつリサイクル
推敲厨には厳しいサイトダヨォ…
お題は「不本意な新人賞受賞」「純文学」でした