ジュミラ前提
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僕の脳裏でいつも展開される、きっと僕だけしか知らない小さな三文芝居は今日も微量の曖昧を含んで世界を指し示した。それは僕の脳のスペースを間借りした小さな劇場の上、天井に描かれたひとつの星座。あれは僕の星たち、僕の世界だ。僕はその世界を彼女と呼んだ。空でも海でも大地でもあった彼女はいつだって僕を惑わせ、しかし僕を導き正し信じられないほど美しく笑うのだ。ぴんと張った線を点と点の橋として貫ききらきらと光り輝く世界は僕の瞳の表面をひんやりと撫でつける。ああきっとずっともう大丈夫。彼女というきらめきさえあれば僕はもう迷うことがない、この夜に包まれていたって暗闇に足を掬われることはないんだ。根拠を愛さなくてはならない立場に居座っていた僕はそういう風に理屈の禁忌へと逃げこみ、眩い光に縋った。継ぎ接ぎだらけの想いを持ってただ立ち尽くしているのはきっと楽で仕方なかったんだろうね。だってそこにいさえすれば世界は手を引いてくれた。僕は実に無力で臆病で、いつだってどこか物悲しい男だ。でも確かに彼女を愛していた。不出来な言葉になるけれど、それはほんとうに確かだった。
彼女に依存するような形さえ為していた僕は、ある時とても大きな罪を知った。僕がゆるすか、それとも終わらせてしまうか。選択権はこちらが握っていた。