「今日はハルがばあちゃんと一緒にいるって言って聞かなくてさ、ハルだけ病院に泊まることになったんだ。それでいま家にひといなくて、なんかちょっと寂しいなって思って」

だから、って。だからなんだよ。言わなきゃわかんねえぞ。放課後の閑散とした教室内で、俺は恥ずかしがり屋の親友を時間と気持ちを使ってゆっくり促した。言いたいことなんてとうにわかってる、でも手助けするほど甘く接してやるつもりはない。それは向こうも理解しているようで、勇気と恥じらいの間での必死の葛藤をもう長い間続けている。夕日が山の向こうへ沈みかけて、赤が一層濃くなろうともユキの勇気はなかなか恥じらいに勝てずにいた。