なつき、って余裕なく漏らされる吐息に似た囁きは、着実に俺の思考回路をぐちゃぐちゃと混線させていく。触れてくる手はどこまでも炎みたいに熱くて、燃えてしまうんじゃないかなんていうばかな錯覚まで起こし始めた。もうなんだかへんに胸がいっぱいで、いっぱいいっぱいで、うまく言葉を見つけることができない。じっと俺を捕らえて離さない瞳が確かな情を孕んでいることだとか、そのすこし強張った表情が決意していることの意味だとか、いまここには、ユキの家には誰もひとがいないことだとか。そういうものばかりが頭を掠め、なんだか妙に照れくさく、ユキの顔を見るだけでわりと精一杯な自分がひどく格好悪く思えた。ふとユキが何かを言おうとして、しかし戸惑うように口ごもったかと思えばすこし視線を泳がせる。やがてかちりとまた俺の網膜を燃やして、熱に浮かされたまま紡いだ。

「夏樹、いい?」