その日、朝目が覚めて時計を見たら、いつもより1時間ほど早い起床だということを知った。ああ、なんだか夢を見た気がする。一週間前に出会ったあの男が、私に笑顔を向けているだけの夢。ただそれだけなのに、私の胸には形容し難い暖かみが去来していた。拳を作って、左胸を軽く2、3度叩く。
「円堂、守」
あれから初めて、あいつの名前を呼んでみた。ただの排除対象ではなくなった、円堂守という一人の男。はつらつとした笑顔も快活な声も、すべて網膜に刻みこまれている。鼓膜に染みついている。脳裏に、焼きついている。
もそりとベッドから体を起こす。布団に感じる名残惜しさはあまりなかった。報告書でも纏めようかと机の上に視線をやったとき、中央を陣取るように置かれた一枚の真っ白い紙がふと目につく。その横には1年ほど愛用しているシャープペンシルが無造作に置かれていた。ああ、そういえば昨日の夜に報告書を纏めようとして、けっきょくそのまま眠ってしまったんだったか。普段ならば報告書なんてものの一つや二つすぐに仕上げられるが、近頃の私は集中力が霧散しがちだ。


粘着系バダップちゃんの80年ネチネチを書きたかったけど力尽きた