「実は俺6回目の2011年に死んでいるので足立さんがいつも見ている俺は足立さんが作り出した幻覚の俺なんです。それにしても足立さん、もう20回目にもなるのにまだ俺がいると思いこんで虚空に話しかけているの?どれだけ俺のこと好きだったんですか、ばかですね」

足立さんを小馬鹿にしながらも俺は涙が止まらなかった。だってあなた誰もいない空っぽで冷えた部屋の壁に延々と独り言を呟いているんですよ。自分の状況を客観的に見てください。すごくへんなひとですよ?俺はいちおう、俺と足立さんの認識としては足立さんの視線の先に存在しているから、返事はきちんとするけれども。外でこんなことしてたら確実に怪しまれますよ、足立さん、いつまで俺の影を追ってくれるんですか。俺が死んでもまだ俺のこと苦しめるんですね、なんてひどいひとなの。
涙と鼻水が混ざってよくわからないものになった液体をぼたぼたと床に落とす俺を見やって、足立さんは小さくため息をついた。そしてめんどくさそうに言葉を零す。

「気づいてたよそんなの」
「えっ」
「でも君、無視すると寂しそうな顔するじゃないか」
「してませんよ、べつに」
「してるよ。だって君、僕の幻覚っていうのは嘘っぱちでしょ。ほんとはただの幽霊のくせに」