静まった格技場の中でふと目が覚めた。いまだぼけている視界を晴らすためごしごしと目をこすり、今はいったい何時かと思案する。周りのやつらの発する微かな寝息から察するに、まだ起床時刻には到達していないだろうことは想定できた。しかし今から寝直すのも微妙か、と考えつつ仰向けの体を横にしたとき、不意にオレの姿を捉えるひとつの視線が目に入る。それの送り主はなんと、斜め後ろあたりに場所をとっていた田島だった。わけもなく心臓がどきりと跳ねる。いつ起きたんだとかいつから見てたんだとかなんでこっち見てんだとかいろんな思考が頭をぐるぐるぐるぐると実に忙しなく回り、意を決してなんだよと言葉を口から押し出してみせると、田島は特有の眼力でしばらくオレをじいーっと見つめてきた。こいつのこういう目を正面から受けるのはやっぱ苦手だ、どうやっても圧倒されてしまう。そうして意味がわからんくらいにオレを見つめたおしたかと思えば、やがて田島は徐々に俯き始め、

「ぶはっ」

なぜか吹き出した。なんでだよ。直後に顔洗ってくるとか言って立ち上がった田島の顔はなんだかまだにやけている。何がそんなに面白いんだとただただハテナを浮かべるしかないオレだったが、上体を起こし伸びをした瞬間にはっと閃いてしまった。もしかして、オレの寝顔が吹き出すほど間抜けだったのか?そう考えてしまうとやけに恥ずかしくなって顔に熱がぶわっと集中する。くそー田島め!おまえだっていつもアホみたいな顔で寝てるくせに!


花井の寝顔がかわいすぎて笑うしかないの会