「好きなの」

ほむらちゃんはそう言ったのだった。わたしより少し離れた場所で。白くてきれいな頬に涙をまぶしながら。裏通りの道は夕日を細やかに遮って、けれど微かにわたしたちはオレンジに染まる。おひさまが西から東に沈んじゃうねと口にしてさやかちゃんに笑われたのは何年前のことだったろう。

「巴マミが、好きなの」

ほむらちゃんはきれいだった。何があっても変わらずきれいにあった。でも急に見慣れた彼女の制服姿が窮屈そうに見えて仕方がなくなった。わたしは自分を、自分の思いをきちんと理解することはしようとしない。常識とか体裁とか、そんなものでほむらちゃんという友達をはかることに、なにかいいことがあるとは感じられなかったから。それにいまから突然ひとりの友達をひとつの異色として見れるほど、わたしは器用でもなかったし。マミさんという単語にだけは、素直に驚いたけれど。わたしのひとりは、いつまでもわたしに顔を向けない。俯いて嗚咽を零すばかり。噛みしめられた唇が、痛そうだなあと思った。

「ごめんなさい」

気持ち悪いなんて言わないで、だって。なんだかほむらちゃんがちいさく見えるよ。彼女はそうやって今日まで想いを押し殺してきたんだろうなあと思った。彼女は日の照る道に出ないまま、影を歩く。そうして、そんな影の中にいるひとりを見つめているわたしに、ほむらちゃんは嫌われたくないと言った。わたしは暗がりの迫りかける空を見る。夕焼けはきれいに私の目を焼いたのだった。


青い花パロのはずだった