「星がきれいだったんだ。だから夜が嫌いだった」

切り取られた壁にはめこまれたガラスの向こうで彼の嫌いが瞬いていた。闇のように空を覆いつくす色に散り散りと添えられたそれら。確かにすごくきれいで、だからこそ僕は彼が放つ言葉の意味を汲み取れずにいた。きれいなものをきちんときれいと感じているなら、嫌う理由なんてないはずだ。なのに彼はベッドシーツに爪を食い込ませる。窓の外に視線をやる気は彼にはないらしかった。僕は彼の分も、なんていう都合のいい解釈を用いて果てしなく続く夜を見ている。いつか夜をテーマにした詩集を読んだのを思い出した。その中の詩には決まり文句のように、美しいという単語が使われていたことも。