なあ僕って陽毬に似てるだろ。なんてね、ばかなことを言ったもんだ。だからなんだって言うんだろうね。

「晶馬?どうしたんだ」

兄貴は困惑を包み隠さず僕の前で露呈させる。きれいに整った爪が畳を掻いた。兄に覆い被さる僕は今、どんな顔をしているんだろうか。切羽詰まったような、余裕のないような、そんな顔をしてるんだろうなあ、どうせ。いつも兄貴の前ではどうやったって格好がつけられない。

「なんなんだ晶馬、プロレスごっこなら遠慮しとくぞ」

はは、と零された笑みが緩やかに空気に融ける。優美を感じさせるその微笑をいったい今まで何人の女の子に見せてきたんだ、なんて馬鹿げた問いが頭に浮かんだけれど、当然すぐに脳内から抹消した。そんなことを訊いてもどうにもならないんだ。