つまらないことで怒らなくなった。

「どりゃ」

いつものように虎徹さんは職場のデスク近くのゴミ箱にバナナの皮を投げ捨てる。そしていつものようにバナナの皮はゴミ箱に体当たりをしただけでホールインワンとはいかなかった。あっちゃーと呟く虎徹さんが次にとった行動は、ゴミ箱の前を通る僕を視界に入れること。ああ彼がこれから発する言葉が予想できてしまった。

「わりぃバニー、そのバナナの皮さ、ゴミ箱に捨てといてくんね?」

ほらねやっぱり。少し前の僕なら自分でやってくださいと一喝していただろう場面の訪れ。虎徹さんは頭を掻きながらへらりと笑っている。

「…しょうがない人ですね」
「おーサンキュ」