真夜中、寮を抜け出そうと言い出したのは珍しくも僕のほうだった。そりゃあ普段真面目なイワンがいきなり不良になったとかなんとか言って彼は驚いていたし、僕だって驚いた。こんな積極性が自分の中に潜んでいたのかと、やたら客観的に自分を見つめて少し頬が緩んだりもした。生温い風が僕らの髪で遊んでいく。どこに行こうか、そう言うとエドワードは場所決めてなかったのかよと快活に笑った。頬を膨らませて遺憾の意を示せば、そうだなイワンくんは夜遊びとかしたことないからどこ行けばいいかわからないんだよな、なんて遊び慣れたかのような台詞をエドワードは紡ぐ。そして軽く辺りを見回したあと、『こっからじゃ俺の行きつけの店までかなり距離ありそうだなあ』と残念そうに嘆息した。寮から出たあと闇雲に歩いたせいでこの場所すらどこなのかよくわからない。