「あなたがワイルドタイガーじゃなくなっても」

僕はずっと鏑木・T・虎徹を愛していきますからね。そう言って笑うバニーは夜の闇の中でだって輝きつづけていた。ちかちか眩しいネオンも届かないような寂れた公園の錆びたベンチにいたって、バニーはきれいに瞬いていた。もうすぐ俺がこの街を去ることを知っているかのように、相棒はふわりと慈愛に満ち溢れた笑顔のまま俺の黒を緑に染め上げていた。くすんだ色ばかりが俺を俺だと主張するのに、バニーには虹色が味方についている。煌びやかなそいつが俺には眩しすぎて、途方もなく悲しい。それでもバニーは俺に暖色をつけようとしていた。虎徹さんには、明るい緑が似合います。黒も似合いますけど、僕にとっての虎徹さんはやっぱり緑です。そう言ってうつくしい微笑みを俺なんかに使うんだ。でも、でもバニー、そうじゃない。俺にはやっぱり黒が合ってるんだ。おまえがスポットライトを浴びるために、俺は辺りを侵す黒にならないといけない。相棒じゃなくて引き立て役としておまえの隣に並んでたんだよ俺は。それに緑が似合うのは俺じゃなくて、ワイルドタイガーじゃないのか。鏑木・T・虎徹に、本当に緑は似合っているのか。