視界がぼやける。首に回された両の手が、ぎりぎりと、ぎりぎりと。圧迫を続けるのだ。白い手が、細っこいその指が、俺を、みちみちと絞めていく。頬に伝う涙はかなしみの証。血の流れる唇はくやしさの証。おまえは今、俺が憎くて憎くて仕方がないらしい。昨日までこの手は俺を傷つける手ではなかったはずなのに。昨日までその瞳は俺を射抜き、睨み殺すようなものではなかったはずなのに。手を取り合って、助け合っていた日々などまるでなかったかのようで、思い出など、まるで死に絶えたようで。

「なあ、バニー」
「黙れ」
「バーナビー」
「黙れ!」

荒げる声とともに、かたかたと、バニーの手が小刻みに震えだす。ぽたりと頬に落ちたのは血なのか涙なのか、確認する術はなかった。ゆるやかに首を絞める力が強められていく。なんだか途方もなくかなしくて、ふっと目を細めた。視線の向こうで緑が泳ぐ。

「バーナビー」
「…おまえがサマンサおばさんを、」
「なあ」
「殺したんだ、おまえが!」

とどかねえなあ。なんて思いながらすこし笑った。俺の声はあいつの鼓膜に向かう途中でシャットダウン、言葉たちは無残にも効力を持たず消えてしまった。何がおかしい、とまた激昂する男は俺の相棒だったはずなのだ。なあバニー、なあバニー?はやくわらってくれよ、俺いますっげえおまえの笑顔みてえや。


20話も鬱でした記念