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ジュアル未完(TOX)

鎖骨をちろちろと舐めつつ彼の腰をそうっと撫でる。いやらしいニュアンスを含んでいることがわかるようにゆっくりと。でも頭上から降り積もる声はくすぐってえ、とかそんなものばかり。僕はなんだかすこし腹が立った。確かに僕は経験不足で、アルヴィンを満足させる技術も技量も何もない。けどさ、けど、あれ、けどなんだっていうんだ。わからないけど要するに僕は悔しかったのだった。ふふふと唇の隙間から笑みを零す彼を前にして、僕ばっかりどきどきして、僕ばっかり頑張ってるのかなあと考える。大人の余裕しか今の彼には見出せないのが、子供の僕にはすっごく悲しかった。もっと慌ててよ、焦ってよ、僕が好きだって言って、とじりじり渦巻くこれを人は愛情って言うのかな。もしそうだとすれば愛ってなんて身勝手なものなんだろう。きれいでもなんでもないじゃない。

「ふ、はは、やめろ、って」
「やだ」

ジュアル(TOX)

冷たいようでいてひどく暖かい。僕はこの大きな手がとても好きだ。時には僕を傷つける手、けれどいつも僕を守ってくれる大切な手。できることなら毎日どんなときでも握って、繋いで、絡めていたい。でも彼は繋ぐどころか握ることさえ許してはくれなさそうだから、だから僕は、別の好意の表し方を考案した。

「それが舐めること、だと?」
「うん」
「意味わっかんね…」

はあ、と自由な片手で顔を覆い大仰にため息をつくアルヴィン。珍しく裏をちらつかせるような笑みを浮かべることなく、本音だとすぐにわかるような呆れ顔を僕に晒していた。もしかして、焦ってたりとか、するんだろうか。そうだったらちょっと嬉しいな、なんて思ってしまう。だってアルヴィンの素顔をちらりと垣間見ることさえ多くはないこの僕が、アルヴィンの内面を引き出してるということになるんだから。逃さないように両手でしっかりと掴んである大きな手がほんのり汗ばんでいるのは、僕の勘違いじゃないよね、と胸中でひっそり呟いた。

「しっかしグローブまで外してくれちゃってまあまあ…これ付けんのけっこう面倒なんだぞ」
「ふうん」
「ふうん、て、おたくなあ」
「あとで僕が付けてあげるからいいでしょ」
「いや、よくねーって、ちょっジュードおま、話聞けよ!」

べろり、指の間を舐めあげてやる。驚きで強張る筋肉の動きが微かに伝わってきた。26歳のおとこに抱く気持ちとしては間違いかもしれないけれど、かわいいなあ、なんてつい感じてしまう。ごつごつした人差し指を口に含んでわざと音を立てながら舌を絡めると、上から舌打ちのような音が聞こえた。見上げると、揺れるひとみと視線がかち合う。ねえアルヴィン、顔があかいよ。

「こっちみんな」
「やだ見たい」
「みんな、って」
「いやだ」

みるよ。アルヴィンのそんな表情、なかなかお目にかかれないんだから。なんて言いながら、目線はそのままに指を一本一本くわえこんで丁寧に舐めていく。ジュード、と吐息たっぷりに紡がれる、余裕のないことばに対して募ったのは途方もないいとおしさだ。すっかり唾液でべとべとになってしまったアルヴィンの手から口を離し、じっとそれを見つめる。なんだか妙に淫猥だ、なんて思考が脳内でぐるぐる回った。やっと解放されたかと息を吐くアルヴィンの頬はやっぱりまだあかくて、耳さえ染まりかけている。かわいいなあ、2度目の呟きをまたも内心で行った。そしてもういちど彼の手を口に含む。うわ、と小さく漏らされた声は勘弁してくれという言葉にさえ聞こえた。ごめんね、まだ解放してあげないよ。人差し指の先端に軽く歯を立てる。びくつくアルヴィンを見てなんだか心が踊った。中指や小指なんかも、歯が当たるか当たらないかの強さで甘く噛んでいく。指先が小刻みに震えていた。見上げたアルヴィンはほんとうに恥ずかしそうに、あかくあかく色づいているもので。いま好きだよなんて言ったら僕はただの変態になってしまうんだろうか。
薬指にきつめに歯を立てればアルヴィンは僕の名前を呼んだ。ここから先は僕らだけの秘密なのだ。


なんていうかコレジャナイ

ジュアル未完(TOX)

優等生がなんかしらんけどうまそうなものをもくもくと食っていた。うまそうなものと言っても少しだけ赤みがかった白く小さい謎の物体だったのだが、俺にはそれがどうにもうまそうなものに見えた。なんでか考えようと思ったがめんどくさいので思考を一時中断する。器用に優雅に、まるでどこぞのお貴族のようにフォークとナイフを使って白いものを切り分けるジュードに声をかけた。なあジュードくん、それ俺にも一口くれよ。なんて言ってみるが一口で済ませる気はさらさらない。ジュードが俺にフォークとナイフを渡した瞬間白いそれは上品な皿の上から姿を消すのだ。親切心を利かせたばかりに自分の食べ物を全部奪われたジュード少年は俺にどんな態度を示すだろうか。怒るか泣くかそれとも許すか。最後のはすこし甘いか。

「いいよ」

俺の耳に優しい柔和な声が響いた。響いた?俺の靴音さえ響かなかったこの場所で、どうしてジュードの声は響くんだろうか。それにまず根本的な問題なんだがここはいったいどこなんだ。真っ白で何もない、しかし高級感漂う机と椅子、そしてやたらと平静にディナーを嗜むジュードは存在している。


息抜きに書いたうんこ雰囲気文だからかなり意味不明
ジュードくんの包容力のおかげで丸くなるアルヴィンが書きたかったような気もする
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