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「俺むかしめっちゃ爪噛む癖あってん」
「どうしたん。電話めずらしない?」「いや大したことちゃうねんけど」「ほんなら小したことか。小したこと言うてみい」「小したことてなんやねん。『小したことやねんけど』いう話の入り方聞いたことあんのかお前」「じゃあ中したことか」「大中小で物測るのやめてくれへん?いや、今日ちょっとそういうん無しで頼む」「その口ぶりからしてもう大したことやんけ。うんごめんわかった、ちゃんと聞くわ」「ちょっと言いづらいんやけど」「うん」「いや。……ほんま大したことちゃうねんけど」「だからそう念押しするとこがもう大したことである証拠やん」「うん、まあ、こんなん言うた経験ないしどういうふうに言うたら正解かわかれへんねんけど」「うん」「昨日うちの姉ちゃん急に倒れて病院運ばれてんな」「えっ、大丈夫なん」「うん、軽い貧血とかで命に別条とかは全然なかったんやけど。でもなんか自分の中でいろいろ考える機会になった気がして。やっぱりなんか伝えたいって時に伝えたい人おらんようになってるんって良くないなとか思って」「うん」「でもこんなん考えたん初めてやから合ってるかとか分からんけど」「うん」「お前にとってほんま大したことにはなれへんと思うけど」「…お前保険かけすぎちゃう?そういうのん俺の専売特許やぞ」「自覚してんのかい。まあそんでな」「うん。俺何回うんて言ったっけ」「俺お前のこと好きみたいやわ。6回言うてたぞ」
「……服を脱がせてもいいか?」
「亜双義、これ。面白かったよ」
高校時代に仲良かったやつおってな、内海いうんやけど。そいつめっちゃ根暗やって、友達ぜんぜんおらんかってん。川のそばでいっつも本ばっかり読んでてな。眼鏡カチャカチャやりながらとにかく本読んでんねん。でも、いやそれやからなんかもしらんけどめっちゃおもろくてな。あれやな、誰とも喋らんと本ばっかり読んでたから知識量えげつないことになってたんやろな。根暗が功を奏してたんやろな。なんか言うたらめちゃくちゃ返してきてくれんねん。なんかそれがめっちゃおもろくて、せやからもう二年まで放課後ずっと内海と川のとこで喋っててん。でも俺が辞めてたサッカー部復帰することなって、内海も受験勉強でめっちゃ忙しなったからあんまり会われへんようなってな。そこからもうそんなに連絡取れてないねん。惜しいことしたなーって思うけどまあこれでよかったんかなーとも思うな。内海からしたらあの時間ってただの暇つぶしやったんやと思うし、内海が新しい人間関係築けていってるんやったらすごいいいことやし。まあ、ええんやと思うわ、これで。あー内海元気かなあ。未だに根暗なんかなあ。コンタクトデビューしてたら笑うわ。高校の同級生に内海の連絡先きいてみよかなあ、でも誰も知らんそうやわー。友達おらんかったもんなあ内海。あーあ。