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フレユリ未完(TOV)

化学やら理論やらのことは何一つ分からないんで子細は省くが、リタの実験に付き合ったフレンが数年前の騎士団見習いの時の姿と精神と記憶に戻ってしまった。……子細省きすぎだろとは自分でもまあまあ感じてるが、これが現実だから受け入れる他はない。勝手なことに他のやつらはみんなギルドの用事がだの明日までにしなきゃいけない仕事がだので誰もフレンの面倒が見れないということなんで、必然的にオレがフレンの傍にいてやることになってしまった。
フレンも今や騎士団長代行というなかなかの地位に就いている人間だ、その顔と名もよく知れ始めているから外に出たら声を掛けられるかもしれない。そしたら未来のことなんて知らない本人は困惑するだろう、そう思いしばらく宿屋の一室で身を潜めておくことにした。リタいわく「長くても明日には元に戻ると思うわよ、理論上」とのことなのでここで大人しく過ごすのは一日ほどで大丈夫そうだ。
「……ユーリ、そろそろ教えてくれないか」
ベッドに寝転がりながら冗談みたいな状況の数々を振り返っていた時、不意に隣のベッドから声をかけられた。もはや懐かしさすら覚える神経質そうかつ陰険そうな棘のある声。振り返ればベッドの端にちょこんと腰掛けた幼馴染がオレをじっと睨んでいた。睨んでいるが、輪郭や目が今より少し丸いので21歳のあいつに睨まれるほどの威圧感は感じない。
「何を教えりゃいいんだ」
「ずっと部屋の中にいる理由だ。ここはどこだ?どうして僕はこんなところにいるんだ。早く宿舎に帰らないと無断外出で懲罰を受けてしまう。こんなところに連れてきて君が何をしたいのかは知らないが、また君の妙な悪ふざけで僕まで罰を受けるのは御免だからな」
1の言葉に10の不満で返され、唐突にとてつもない面倒臭さに襲われた。当時の感覚が鮮明に蘇ってくる。お小言が特に多い時期だったからな、このあたりは。フレンは常にピリピリしてたしオレたちの仲もそんなに良くなかった。そりゃあオレの顔を見てるだけでも不平がすらすら出てくるだろうし、しかもこの状況だから奴のイライラもピークに達しているだろうことは容易に窺い知れた。──簡単に言うと相手するのがめちゃくちゃダルい。
「まあいろいろ理由はあるんだが、明日には元通りになるらしいから今日のところはゆっくり休んどけよ。ここ最近訓練続きでくたくただろ」
「そんな言葉で納得できると思うのか。きちんと説明をしろ、ユーリ」
「……」
まあそりゃそうだろうな、オレでも納得しねえわ。仕方なくベッドから身を起こしフレンに向き合う。不機嫌を隠そうともしない様はいっそ新鮮にも思えた。
「簡潔に説明すると、未来のお前がトンデモ実験に巻き込まれて、そんで過去の姿でここに呼び出されちまったんだ。未来について何も知らないお前が外に出たらいろいろ戸惑うだろ?明日にはお前は元の場所に帰れるらしいから、今日一日はここで大人しく過ごしてろ。わかったか?」
詳しいことは省き宣言どおり簡潔に事実を伝える。フレンはオレの言葉を聞いたあと、今までの小言ラッシュが嘘のように数秒のあいだ静かにその場に固まっていた。そしてしばらくの後、訝しげな顔でこっちを見つめる。
「君、大丈夫か?」
「……まあ予想通りの反応だけどな」
しかしこれ以上説明のしようがないから仕方がない。フレンがキレようが喚こうがこれでいったん状況を飲んでもらう他はないのだ。

フレユリ(TOV)

「じゃあボク、ユニオン本部に行ってくるよ。二時間後にここに集合だからね、忘れないでよ!」
カロル先生がそう言って元気よく本部に駆けていったのが数十分前、オレが宿屋でフレンとばったり出くわしたのも数十分前。任務の空き時間か何かで一、二時間のあいだ暇らしく、いったん落ち着ける場所で休憩しようとしていたらしい。つまりオレと同じ目的だ。どうせ互いに休むだけなんだから同室を取ろうかという話になり同じ部屋に踏み入ったのは十分程前だ。入るなりベッドに寝転んだオレを尻目にフレンは静かに鎧を脱いで黙々と手入れを始めた。
……で、それからさらに数分後。オレは今フレンと同じベッドに腰かけ、口の中に舌を割り入れられている。何がきっかけだったっけ?これといった始点はなかった気がするが、気づけば「そういう」雰囲気になっていた。まあこいつとのあいだではよくあることだ。触れている舌が熱い。
「休憩するんじゃなかったのか?フレン隊長」
ようやく口を離された隙にそう訊いてみると、フレンは「君こそこんなことをしていていいのかい」と返してきた。フ、とわざとらしく笑いながら首に手を回してやる。
「こんなことってどんなことだよ。詳しく言ってくれなきゃわかんねえな」
「……やっぱり君は少し黙っていてくれ」
言うや否やフレンの唇がまたオレの口を塞いだ。舌を強引に絡め取られ言葉を奪われる。口で勝てないからって、代わりに妙な対抗策を覚えちまったもんである。フレンの赤はオレのそれを吸い上げ愛撫すると今度は焦らすように歯列をなぞった。やたらキスが上手くなったのはいったい誰のせいなんだか。
キスを続けながらフレンはオレの胸元に手を滑り込ませた。その手のひらの熱さが肌に直接伝わってくる。暇を持て余していた手で耳の形をなぞってやると、わずかにフレンの指が揺れた。至近距離にある金色の睫毛も少しだけ震える。と思えば瞼がゆっくり開いていった。唇がまた離されて、フレンがぼそりと一言を放つ。
「どうして目を開けているんだ」
「さあ?」
にやにやと笑えば目の前の幼馴染はため息を吐いた。それでもオレの体をまさぐる手は止まるどころか下へ下へと下降していくもんだからなかなかにスケベな隊長さんだと言える。首筋に唇を落とされるのとほぼ同時に腰布を解かれ、その手慣れた様子が妙に可笑しくなってフレンの頭を抱きながらばれないように笑った。
「急げ急げ。時間あんまりねえぞ」
「わかってる」
「優しくされてる暇なんかねえからな」
「……」
察しのいい男は今までよりも荒い手つきで肌に触れてくる。こういう触られ方は嫌いじゃない、それにこいつの余裕をくずすのはいつも楽しい。理性をわざと捨て去った青色の目に射抜かれながら、頭の中で密かに残り時間をカウントした。
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