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龍アソ未完(大逆転)

十五の頃、神は死んだ。母が仏に成られたからだ。骨壺に納められていく白い破片を見つめながら、人間とはこうも小さくなれるものなのか、とひどく他人事のように考えていた。母は父の元へゆけたのだろうか。天国などというところは本当に存在するのだろうか。もし天国があるならば、地獄も同様に存在し得るのか。父は倫敦で五人の貴族を殺害した赦しがたい悪鬼なのだそうだ。父は地獄へ堕ちたのだろうか。聡明で温厚だった父の笑顔を頭に浮かべ、あのような素晴らしいお方になんと似合わない場所だろうと叫びだしたくなった。そしてオレは遂に決心したのである。絶対に、何をしてでも真実を炙り出そうと。

おとうさんおかあさんを大切にしようではないか諸君、と至極当たり前な主張を大声で吐き出す男に出会ったのは勇盟大学に入学してから少し経った頃の事だった。チョコザイなるヘナチョコ、と我ながら散々たる第一印象を抱いたその男にまさかの歴史的大敗を喫したオレはやがて奴とつるむようになり、今や親友と呼べるほどの仲になっているのだから運命とはおかしなものだ。成歩堂龍ノ介は一見地味でウッカリ者で黒くて冴えない男だが、その実まっすぐで誠実で強い男だった。もしかするとこういった男が一等弁護士に向いているのではないかと思う時もある。酒を嗜んだ際そんなことを溢してみると、「やめてくれよ」と奴は苦笑した。
「人の人生を背負うような仕事、ぼくには荷が重いよ。それにおまえのように優秀な男であればすべて任せたいと思うだろうけど、ぼくみたいな頼りない人間に託そうとしてくれる人なんていないと思うし。優秀な弁護士さまにそんな評価をいただけるのは有り難いけど、おまえはぼくを買い被りすぎだよ」
そう言ってはにかむ男に少しだけ苛立ちを覚えた。


またかくかも

最原と百田未完(論破V3)

「いやー、ゴメンゴメン。まさかラブアパートの扉が故障しちゃうなんて思わなかったねー。今から修理しても直るのは朝になると思うから、悪いんだけどオマエラ朝までここで待機しといてくれる?」
確実に故意の故障だ。もはや推理なんてしなくても分かる。じゃあそういうことで、と早々と姿を消したモノクマにぶつけ損ねた恨み節を口の中で転がしたまま、さてどうすべきかと漠然と考え始めた。僕の隣にいる彼ーー百田くんが『いつも』の百田くんであれば、不安なんて特に感じないままちょっとした旅行気分で一晩を過ごすことも出来ただろう。けれど今僕の横にいるのは、この空間で作り上げられた普通じゃない百田くんだった。彼はいま僕を理想の相手だと思い込んでいる。そんな相手と朝まで二人きりというのを、どう捉えるのだろうか。その横顔を見やっても感情らしい感情は何も拾えなかった。こんな風にたまにすごくやりにくいところを見せるのは普段でもここでも一緒だな。思いながら、気づかれないように息を呑んだ。気まずいにも程がある。

龍アソ未完(大逆転)

船員が夕食を運んで来てくれたことでもう時刻が夜だということを知る。ずいぶん法律書を読み耽ってしまっていた。机に皿を幾つか置き、失礼しますと船員は素朴な態度で去っていく。いつも有り難うございますと礼をし、完全に扉が閉まるまで暫し入り口を見つめていた。足音が遠ざかってゆくのを確認した後、扉のカンヌキをしっかりと閉める。さあこれでこの部屋はいったん自由だ。洋箪笥の目の前まで向かい、二度程その扉を叩いた。夕食だ、と端的に告げる。が、すぐには返事が返ってこなかった。
「成歩堂?」
「……あッ!あ、開けていいよ」
焦ったような声と共にガタ、と何かにぶつかるような音が内部から聞こえてくる。眠っていたのだろうか。いや、声は寝起きのそれではなかった。首を傾げながら戸を開けると、成歩堂がいつも通りに三角座りをしてちょこんと収まっている。その頬は普段より少し赤いように見えた。
「何かあったか?」
「いやっ、な、何でも」

最原と春川未完(論破V3)

いつものようにデートチケットを持って百田くんのところへ向かっている途中、前を歩く人影が見えた。二つにまとめられた長い黒髪と赤が基調の服、その後ろ姿から春川さんだということが分かる。彼女の右手には僕と同じようにデートチケットがしっかりと握られていて、これから誰かを誘いに行くのだということがわかる。春川さん、と声をかけてみると彼女の足はぴたりと止まり、ゆっくりと僕のほうに顔を向けてくれた。
「最原。……何?」
「あ、これから誰か誘いに行くのかなって思って」
「……あんたも今から?」
「うん。僕は百田くんを誘おうかなって……」
と、そこで空気がぴしりと固まった。というか、春川さんからただならぬオーラが巻き起こったのだ。赤い瞳がぼんやり光りながら僕を射貫いている。探偵としての勘が働き(いや探偵じゃなくても丸わかりだと思うけど)、僕は早々にこの状況の意味を察してしまった。
「春川さんも、百田くんを誘おうとしてるんだね?」
そう言い切ってみせると、春川さんはかすかに肩を揺らした。どうやら当たっていたようだ。

最原と王馬未完(論破V3)

オーディション最原とプロローグ王馬
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「僕は探偵がいいな」
ダンガンロンパのオーディション会場で知り合ったたぶん同い年の男子、○○くんはそう言った。どこかたどたどしい喋り方が印象的な彼だが、その一言ばかりははっきりとした声で口にする。気持ちはわかる、だってダンガンロンパにおいて自分の才能はこれ以上なく大切なものだからだ。才能次第で殺しかたにも死にかたにも意味と工夫が生まれてくる。オレは手元の『ダンガンロンパ計画ノート』と銘打った自らのノートに「○○くん:探偵枠」と簡単に書き込んだ。
「探偵っていうのは霧切ちゃんみたいな役がいいってこと?」
「いや、クロになりたいんだ。探偵がクロだなんてもう珍しくはないけど、ロジックを複雑にして参加者を困らせれば視聴者も面白いかなって思うし」
「へー、視聴者を楽しませるくらいの謎を残せる自信があるんだ?」
「いちおう、案はたくさん考えてあるけど」
そう言うと○○くんはオレと同じようなノートを鞄から取り出して膨大な数の殺人計画を丁寧に紹介してくれた。けっこう面白いし勝算はあるけど、これならたぶんオレの考えてるもののほうが面白い。
「○○くんはどういう役になろうって考えてるの?」
「オレは、とりあえず被害者かな。どうせなら狛枝くんレベルの、ファンみんなの記憶に残る死に方がしたいよね」
「へえ、勇気あるね。才能は?」
「いろいろ考えたんだけど、総統かな。どこかの大統領と同じ肩書きだけど、虐殺とは真逆で殺される側っていう引っ掛けにもなるし。何より必然的にカリスマ性が手に入るから参加者を撹乱しやすくなるしね」
「いかにもクロ側の才能だけど被害者なんだ。面白いね」
「そうだ、ついでにオレの犯行計画も聞いてくれない?○○くんの作戦に活かせるかもしれないし」
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