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最原と百田未完(論破V3)

正直、リサーチはした。最初に百田くんと酒を飲んでから数週間後、出来るだけ自然に見えるような誘いかたで彼をもう一度居酒屋に連れ出してみせた。彼は何も察してはおらず、ただ珍しく僕から遊びの誘いを入れたことについて上機嫌な様子を示しているのみだった。生ビール、日本酒、焼酎、アルコールの数々を消費していく彼の少し上気した頬を隣で眺めながら、これなら万が一でも大丈夫か、と一人胸中で呟いた。その一言は思ったより最低な音で心に響いた。
「オメーがこんなに酒好きだったとは知らなかったな」
僕の部屋の中で、百田くんが缶ビールの二本目を開けながらそう言って笑う。僕は曖昧な笑みを返しながら梅酒の入ったグラスを傾けた。この前居酒屋に行ってからまだ一週間と少ししか経っていない。さすがに間を空けなさすぎたか、と思う気持ちはあったけれど、チャンスなんてものがあるとするならもう今日ぐらいしかなかった。彼はもうすぐ宇宙飛行士としての訓練が忙しくなるらしく、きっと休みなんて合わなくなる。日は限られていたのだ。百田くんは今日も機嫌良さげにハイペースで酒をあおる。飲んだ量に比例して、その笑顔はどんどん柔らかくなっていった。目尻が酔いにほだされている。口元はゆるゆると弧を描いていた。そんな彼と対照的に僕はきりりと視界を研ぎ澄ませ、口を引き締めている。百田くん、ごめん、僕は嘘をついている。実際はそこまで酒が好きというわけでもない。
初めて一緒に飲みに行った数週間前。アルコールの入った百田くんはよく笑いよく喋り、その声は普段より大きくて、頬は赤く、いつも以上に僕との距離が近くて、そしてとにかく無防備だった。じっと見つめてもしきりに名前を呼んでもただ楽しそうに笑っていた。しかも、次の日になると飲んでいた時の記憶がほとんどないだなんて言ってきた。僕は最低だ。どうしてそんなことを好機だなんて捉えてしまうのか。けれど、そうだ、一度だけでいい。諦めるための大きなきっかけが欲しかった。あればいい、くらいのものだったけど。


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