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主モナ(P5)

「いつかアン殿をドライブに連れて行きたいんだが」
「じゃあ俺で練習する?」
そんなやりとりを経た末に俺はメメントスでモルガナカーに乗り込んだ。デートの練習なので、勿論二人きりだ。
「……いや、ワガハイ自体に乗ってもらうというより、ニンゲンになったあと車を買ってアン殿を助手席に乗せたいなーっていう意味だったんだが」
「でもこの方法でも二人きりになれるぞ。会話も出来るし」
「まあな……今のところは仕方ねえか」
ハンドルを握ってアクセルを踏む。いつもは派手に飛ばしすぎてしまうので、デートだということを念頭に置いて出来るだけ速度を出さないようにした。緩やかに進むモルガナカーは暗い地下を両目のライトで照らしている。周りにはちらほらとシャドウの姿が見えたが、今は無視しておいた。
「雰囲気出ねえな」
モルガナが困ったようにぽつりと呟く。確かにこの場所をデートに選んでしまうのは最悪手だ。しかし誰かのパレスでデートなんて悠長なこともしていられないし、モルガナが車になれるのはこの場所しかない。
「オマエにもし彼女が出来たとして、この場所に連れて来たいと思うか?」
「まずないだろうな」
「うるせえ!」
何故か逆ギレされる。割と荒んでいるらしい。苦笑しながらシャドウを避け、右にゆっくりと曲がった。「明日にでもニンゲンになりてえ」と嘆くモルガナは俺のハンドルに合わせてただ暗闇を走っている。何の楽しみもない、むしろどこか陰鬱とした空間は果てしなく奥へと広がっていた。誰にも内緒で俺たちは闇の先へと下っていく。それが俺にとってこんなに幸福なことをモルガナは知り得ないのだ。
「俺は楽しいよ」
言うと、モルガナは怪訝な声をあげた。へんなヤツだな、なんて半ば呆れたような声色で口にする。
次の階に着いたら帰ろうぜとモルガナが言った矢先、窓の外にホームが見えた。モルガナに気づかれないように、こっそりとそこを離れた。


ぺごくんはいつか寿司屋のパレスを作る

龍アソ未完(大逆裁)

「……苦っ」
向かいで小さく声がした。その主の顔を盗み見ると、男は眉を顰めちろりと舌を出している。苦渋の色に塗られた視線は手元の珈琲へと向けられていた。
「ごめん、砂糖取ってくれ」
ゆるく頭を振りながら、成歩堂がオレの傍にある角砂糖の幾つか入った硝子瓶を指差す。望みどおり瓶を向かいへ差し出してやると、心底感謝していると言いたげな「ありがとう」が返ってきた。
「そんなにも苦いのか、此処の珈琲は」
「いやあ、人はどうか知らないけど。ぼくは苦いの、あまり得意じゃないから」
「ほう」
そう会話をしているうちにも成歩堂は砂糖を三個程掴み黒い海へそれを次々に落としていった。オレも甘いものは時折嗜むが、今目の前で繰り広げられている甘味の創造ほどにそれを求めようとはあまり思わない。その考えが知らず知らずのうちに表に出ていたのか、成歩堂がオレを一瞥したのちに困ったような笑みを浮かべた。
「おまえもたまにじゃなくてもっと糖分とればいいのに。頭が働きやすくなって良いぞ」
「まあ、そうだな」
「なんならこれちょっと飲むか?」
そう言ってカップをこちらに向けてくる。一瞬耳を疑った。何を言っているのだ、この男は。


お題「コーヒーと軽犯罪」で間接接吻だね///みたいなアレでした
でも亜双義の机になんかシベリア的なものあったよな 切腹

主喜多(P5)

玄関を開けた瞬間に大声で俺の名前を呼んだ週末の訪ね人はどこからどう見てもここ数年連絡すら取れなかった友人の喜多川祐介だったし、さらにそいつはやたらにでかい四角い何かを両手に重そうに抱えていた。まあ、その正体は確実にキャンパスだった。絵を見せに来た、ということだろうか?
「やっと完成したんだ、この絵が。誰よりも早くお前に見せたくてな」
当たっているようだ。喜多川祐介は絵を見せに、俺に数十年ぶりに会いに来た。長年連絡も寄越さず済まなかっただとか、そういう言葉さえ口にすることなく。なあ祐介、俺は何度もお前に電話をかけた。手紙を書いた。一人になったとき、気が付けばいつもお前の名前をつぶやいていた。彼女だって何人かはいたけど、お前の笑顔を思い出すたびむなしくなっていつだってすぐに別れてしまった。なあ祐介、分かるか、俺もお前ももう39になるんだ。初めて東京で出会ったあのときからもう20数年が経った。俺は皺が増えて、お前だって増えた。それなのに、お前はまだ息も止まりそうなほど綺麗だ。面食らってしまう。
「お前の事を考えて、ずっとこれを描いていた。……しかし、顔なんて実物を見なくても記憶の中だけで充分だと思っていたんだが。お前はますます美しくなったな」
さらりととんでもないことを言うところ、まったく変わっていない。恨み言のひとつでも言ってやりたいのに言葉がうまく出てこなかった。
ついこの間祐介の個展を見に行った。どの絵の素晴らしさも俺の言葉では表しきれない。人の醜さも美しさも何もかも、お前は巧みに描き出している。お前は立派な画家になった。あまりにも当たり前な未来だと思ったんだ。だから俺は、ああ祐介、
「お前が好きだ」
唐突にそう告げられた。俺は芸もなく、ただ、目を丸くした。
「言葉より、絵を見てくれれば分かるはずだ」
そう言うと家に押し入り、玄関にキャンパスを置く。強引な行動を呆れる暇も与えられずキャンパスに掛かった布を取り払う祐介をただ見ていた。ばさっ、と白が取られた瞬間、ひとつの絵が顔を出す。それは人物画だった。とても繊細に、緻密に描かれている。その技術ももちろん凄まじいものだったが、何より目を惹いたのは絵から溢れ出る祐介の感情そのものだった。まるでこちらに伝えるために描かれているかのように想いの具現化したそれは、まさしく高校時代の俺の絵だった。この男はずっと俺のことが好きだったのだと、それは億の言葉より明確に示していた。逃れられない、何度だって探られて盗まれる。そうだ、こいつだって怪盗なのだから、当たり前だ。
「ずいぶん時間が掛かってしまったが、これが俺のお前への全てだ」
「よければ、受け取ってくれないだろうか」

龍アソ(大逆裁)

亜双義一真は生きていた。助かる見込みなど有りはしなかった筈なのに、奇跡的にも息を吹き返したのだ。アイツは殺人事件なんて存在しなかったかのような振る舞いで、いつもどおりにぼくの名前を呼んだ。「成歩堂」と象られた言葉の輪郭が随分懐かしく思えて、だからだろうか、違和感ばかりがぼくの胸を襲った。
乗船を正式に許可されたぼくは、ただし新たな部屋を用意することはできないという至極当たり前の条件を言い渡された結果、一等船室での亜双義との日々を再開させていた。もう身を隠す心配もないので今は男二人、同じ寝台で身を寄せあって眠っている。おまえの部屋なのだし引き続き洋箪笥で眠るよとは宣言したのだが、亜双義はそれを良しとはしてくれなかった。「もし本当にオレが居なくなった時もここで眠れよ」なんて不吉な話をひとつする。止めてくれよ、おまえはこうして生きているのに。
「成歩堂、まだ眠らないのか」
「うん」
眠れないんだと言うとそうかとだけ返ってくる。目の前にある眼差しは一筋にぼくを見ていた。迷いや曇りなど一点もない目をしている。果たしてそんなに澄んでいただろうか。
「明日も朝早くから司法の勉強をするんだろう。少しでも寝ておかないと辛いぞ」
「そうだな」
答えながら、けれど疑問が胸に下りてくる。どうしてぼくは司法の勉強なんてしていたのだったか。おまえが生きているのに、ぼくが弁護士になる必要などないのではないか?しかし亜双義は当たり前のようにぼくが弁護士になることを待ち望んでいるようだった。何かがちぐはぐだ、でも指摘だなんて恐ろしいことは、今のぼくには出来やしない。二度も失いたくはない。
亜双義がぼくの頬をそうっと撫でた。子をあやすような優しい手つきは、ぼくへのいとおしさのようなものを隠そうとはしていなかった。その手に自分のものを重ねて、亜双義、と名を呼んでみせる。
「おまえは存在しているよな」
「……何を妙なことを。今、此処にいるだろう」
「そうだよな、それが正しいんだよな」
「正しいさ」
微笑みとともにそう返される。安心していいはずだった。けれど不安はぼくの頭を去りはせず、どうしようもなく恐ろしくなる。亜双義の胸に顔を埋めると頭上からは笑い声が降った。この船は英国に着く。亜双義はぼくを引き連れて司法を学び、ぼくは新たな文化に触れられるのだ。そんな未来が確実に約束されているはずなのに、どうしてぼくはそれを想像することができないのだろうか。なあぼくたちは、本当に正しいのか?
「倫敦でも西洋舞踏が観られればいいな。成歩堂、ニコミナ・ボルシビッチという少女を知っているか?…………」


バグった大逆転

龍アソ未完(大逆裁)

朝起きたら亜双義にのしかかられていたし、何ならぼくの股間のあたりに亜双義の顔があった。その手はすでに寝間着の内側をまさぐっていて、もう少しで褌へとたどり着きそうである。ぼくの目覚めに気付いた亜双義はこちらを見上げて「おはよう」と顔色一つ変えずに言った。
「……何を」
「朝の処理だ」
「……いや」
確かに下は元気な事になってしまっているが。何せ朝だし、まあ、健全ないつもの生理現象だが。何故亜双義は今日に限ってわざわざそこに着目したのだろうか。もしや昨日の夜、ぼくが途中で疲れて眠ってしまったことを怒っているのかしら。恐らくそうだろうな。
しかし、残念ながら今は別の問題がぼくの頭を占めていた。単純な話である、おなかがすいたのだ。性欲より食欲のほうが今は強い。ああ今すぐ漬物をおかずに米をかっ食らい味噌汁を啜りたいのだ。
「あの、亜双義」
「何だ」
しかし亜双義はもうやる気になってしまっているようだった。返答をしながらも視線は股間に一心に注がれていて、手は休むことを知らない。すでに褌の紐に指がかかってしまっているし、動きが止まることはもうないだろう。けれど、それでも、ぼくは朝飯が食べたいのだった。
「言いにくいんだけど、その」
「早く言え」
「……朝飯を先に食べないか」
は?という感じの顔がぼくに向けられた。怪訝が丸出しの状態でそこにある。予想通りの反応に心臓が縮こまる思いがした。
「この状況で、朝飯だと?」
「うん、まあ、非常に申し訳ないとは思うんだけど」


お題忘れた
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