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主明(P5)

明智吾郎は死んだ。死んだ?そんなバカな!明智吾郎は生きている。あいつは大罪人だ、のうのうと死ねていいはずがないだろう!今日もきっとまたルブランに現れて、きっちりと貼りつけた仮面でこんばんはと俺に話しかけるのだ。俺を騙しながら、騙されているなどと知らないまま。明智、ああ明智、誰も彼も愚かだ。俺達は全員犯罪者で、誰も誰かの罪を責められはしない。けれど死んでしまったとなれば話は別だ。お前は罪から、俺から逃げたのだ。だって死だなんて一等安易な救いじゃないか。
目を閉じてまた開くと、目の前に明智吾郎が立っていた。微笑を湛えながら、しかし目は笑っていない。俺の認知の明智吾郎だ。俺は明智の前へと走って、その細い体を突き飛ばした。尻餅をつく明智に跨がり胸ぐらを掴む。
「償え」
「償え!」
「償ってから死ね!」
大声でそう叫ぶと白い空間に俺の声ががんがんと反響した。明智は得意の薄っぺらい笑みを消して、無表情に俺を見る。首でも絞めてしまいたかったが、殺してしまえば意味がない。この男は大罪人で、今までの罪人達のようにこれから死ぬよりも辛い罰を受けなければならなかった。生きていなければならなかったのだ。それなのに勝手に死んでいった。お前と仲間になんてならなければ、お前にコーヒーなんて出さなければこんな気持ちにはならなかったのだろうか。
明智は俺をじっと見ていた。が、やがていびつに笑った。そんなにへたな笑い方は初めて見る。
「俺を苦しめるのがそんなに楽しいのか」
そう呟くと、いびつな男は俺の顔に唾を吐いた。
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