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主モナ(P5)

「いつかアン殿をドライブに連れて行きたいんだが」
「じゃあ俺で練習する?」
そんなやりとりを経た末に俺はメメントスでモルガナカーに乗り込んだ。デートの練習なので、勿論二人きりだ。
「……いや、ワガハイ自体に乗ってもらうというより、ニンゲンになったあと車を買ってアン殿を助手席に乗せたいなーっていう意味だったんだが」
「でもこの方法でも二人きりになれるぞ。会話も出来るし」
「まあな……今のところは仕方ねえか」
ハンドルを握ってアクセルを踏む。いつもは派手に飛ばしすぎてしまうので、デートだということを念頭に置いて出来るだけ速度を出さないようにした。緩やかに進むモルガナカーは暗い地下を両目のライトで照らしている。周りにはちらほらとシャドウの姿が見えたが、今は無視しておいた。
「雰囲気出ねえな」
モルガナが困ったようにぽつりと呟く。確かにこの場所をデートに選んでしまうのは最悪手だ。しかし誰かのパレスでデートなんて悠長なこともしていられないし、モルガナが車になれるのはこの場所しかない。
「オマエにもし彼女が出来たとして、この場所に連れて来たいと思うか?」
「まずないだろうな」
「うるせえ!」
何故か逆ギレされる。割と荒んでいるらしい。苦笑しながらシャドウを避け、右にゆっくりと曲がった。「明日にでもニンゲンになりてえ」と嘆くモルガナは俺のハンドルに合わせてただ暗闇を走っている。何の楽しみもない、むしろどこか陰鬱とした空間は果てしなく奥へと広がっていた。誰にも内緒で俺たちは闇の先へと下っていく。それが俺にとってこんなに幸福なことをモルガナは知り得ないのだ。
「俺は楽しいよ」
言うと、モルガナは怪訝な声をあげた。へんなヤツだな、なんて半ば呆れたような声色で口にする。
次の階に着いたら帰ろうぜとモルガナが言った矢先、窓の外にホームが見えた。モルガナに気づかれないように、こっそりとそこを離れた。


ぺごくんはいつか寿司屋のパレスを作る
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