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主モナ(P5)

「おい、オマエ!」
もう寝ようかとソファーから腰を浮かした瞬間、横にいたモルガナがそう声をかけて俺を静止させた。見るとその顔はしかめられていて、何だか怒っているような表情になっている。
「顔よく見せてみろ」
ぶっきらぼうにそう告げられて、言われたとおりしゃがみこんでソファーの上のモルガナの前に自分の顔を持っていく。モルガナはその先端の白い前足を上げ、俺の頬にペトリと触れた。同時に、おいおい、という呆れたような声が発せられる。
「オマエ、隈が出来てるじゃないか。ちゃんと寝ないと潜入で失敗しちまうぜ?」
怪盗にとって体調管理も大事な仕事だ、と叱るように俺に話す。確かにここ2日程は寝られなかった。ベッドに入ってもまったく寝付けなかったのだ。原因は、今俺に説教をしてくれているこの仲間だった。
モルガナが家を飛び出した時、最初は心配しながらもすぐに帰ってくるだろうという気持ちを悠長にも持っていた。けれど夜になっても帰ってこなかったことで不安は肥大し、早く帰ってきてくれと祈る気持ちは自然と俺の目を冴えさせた。無事戻ってきてくれた今、瞼が2日分の眠気を重くのし掛からせている。
「眠そうだな。今日はちゃんと寝ろよ?」
素直に頷き、大きなあくびをひとつする。モルガナも俺につられたように伸びをして、「もう寝ようぜ」といつもどおりに俺に言った。計り知れない安堵に、顔が綻ぶ。
「何笑ってんだぁ?ちょっと怖いぞ」
「モルガナ」
「うん?」
「寝かしつけて」
はあ?と言いたげな表情が器用にも猫の顔で表現される。ちょっとおかしくて笑ってしまっていると、何を言ってんだオマエと怪訝をそのまま言葉にされた。
「一人じゃ寝れないんだ」
「……オマエ、何急に子供みたいなこと言ってんだよ。もう高校生だろ?」
ため息をつくモルガナをそれでも熱心にじっと見つめる。初めはただただ呆れていたモルガナは、俺の視線を長く受けているうちに居心地悪そうに目を泳がせる。やがて根負けしたのか、ああ、と大きな声をあげた。
「わかったよ、寝かしつけてやるよ!まったくオマエは、ワガハイがいないと寝ることも出来ないのか!」
「うん」
「即答してんじゃねーよ!」
怒りながらも、モルガナは布団に潜り込むと珍しく胸元のあたりまで来てくれた。髭が前を向いていて、どことなく上機嫌にも見える。
「ワガハイのあったかい体がこんなに近くにあるんだ、これで眠れなきゃ一生不眠だぜ」
「うん、よく寝れそう」
「当たり前だ!……ちゃんと寝ろよ」
おやすみと言うと、モルガナは照れくさそうにおやすみと返した。あまりにも温いので抱きしめて眠りたかったけど、怒られそうなのでやめた。
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