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日狛未完(ロンパ2)

ボクが見る日向クンの姿は、だいたいが走っている姿だった。力仕事も頭を使うこともすべてこなして、その傍らでみんなの相談を受けている。ボクの相談まで受けるなんて言ってきたときはさすがに言葉を失ってしまった。死神だなんて呼ばれ続けて早10数年、ボクの傍にあんな気軽に近寄ってきた存在なんていただろうか。ボクの傍にいたら死んじゃうよと脅してみても、次そんなこと言ったら怒るぞ、なんて言いながらもうすでに怒っていた。日向クンには嫌われたくないから、ボクがその質問をしたのはただ一回きりだ。嫌われたくないだなんて、言う資格がボクにはないのに。

「日向クン。忙しいのはいいけど、あまり無理な力仕事はしないでよ。ボクに近づいてしまった以上、キミに命の危険が迫ってるかもしれないんだ」
「またそんな話かよ。大丈夫だって言ってるだろ」
「でも、もう笑い事じゃないんだよ」
「大丈夫だよ」

ボクが声をかけるたび、いつも日向クンはそう言って笑ってみせる。その姿が逆にボクをより強い心配で締め付けていることにはおそらく気づいていない。

クルスニク兄弟未完(TOX2)

まだそんなに仲良くない期
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「お前は朝が弱いのか」
「…! ご、ごめんなさい」
「ああ、いや、謝らなくても…いい。いいが」
「…?」
「遅刻なんかは、普段よく…しているのか?」
「……た、たまにだけど、……何回か」
「そう、か」
委縮する弟の旋毛を見下ろしながら、自分は弟のことを何も見ていなかったという事実に改めて責め立てられた。いつも俺は朝、弟の目覚めなんて待たずに出勤している。だから日々の弟の遅刻はおろか起床時間さえあやふやという体たらくだ。ルドガーは今までずっと一人で朝を迎え、時に寝過ごしてしまっていたのだろう。どれだけ寂しく心細かったか。まだ幼いこの子を起こしてあげられる家族は俺しかいないのに、俺はその役割を放棄していた。最低だ。
「ルドガー」
「ご、ごめんなさい!こんなこともできなくて…」
「…いや、怒ってるんじゃないんだ。ただ、その」
「……?」
「これからは、朝は俺が、起こしに…」
そこで、はたと言葉が詰まった。「これからは朝は俺が起こしに行ってやる」。俺は今からそう告げようとしていたわけではあるが、「行ってやる」という言葉にルドガー殊更委縮してしまう可能性はないだろうか?…大いに有り得る。そんなことはいいと拒否されてしまいそうだ。では言い方を変えてみるとして、どう言えば気を遣わせずに承諾に持ち込めるのか?「行ってやってもいい」…駄目だ悪化した。「行ってやろうか」…無難か?しかしさっきと大して変わりがない気がする。ここはもう少し強引でもいいのではないか。
「…兄さん?」
俺の沈黙の長さを不可解に思ったのか、ルドガーが不安気にこちらの様子を窺った。また怯えさせてしまったのか、俺は。これ以上の沈黙はタブーだ。早く安心させてやりたくて、ついに頭に浮かんだ言葉をそのまま形にした。
「これからは俺が起こしに行く」
「…えっ」
言ってしまった。よりにもよってなんて横暴な台詞なんだ。まるでルドガーに選択権はないと言っているようじゃないか。現にルドガーは眉を下げ、困惑を露わにしている。服の裾を掴む力は弱くはなさそうだった。本当に何をしているんだ、俺は」
「いやなら断ってもいいんだぞ」
「い、いやじゃない!ちっともいやじゃない、けど」
「…けど?」
「その、迷惑なんじゃ…」

ジュルド未完(TOX2)

ルドガーエンド後
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「まるでドラマだな」
湖がぼやりと映し出すのは悲しいくらいにきれいな夕焼けだった。僕は僕としての愛をそこに見出すことすらままならないまま、彼のすっかりくすんだ緑を見つめ続けている。なにもこんなところで僕とこんな話をしなくてもいいじゃないか。当てつけのようなものなんだろうか。…最近僕の心もすっかり汚れてしまったと思う。
「ラルが妊娠した。子供の名前はエルにするつもりだ」
先月ルドガーはついにヴィクトルの名を背負ってしまった。繰り返さないって約束して、と何度も僕らは言った。今になって考えると、そうしている時点で僕らはすでにある程度の事態を予測していたのかもしれない。ラルさんは今買い物のために出掛けているんだそうだ。ついていかずに僕を優先している彼にもひどく腹が立つ。僕の愛はべつに、かつての影へ成り変わったわけではない。今でも彼が好きだ。だからいつまでたっても切り離してくれなかった彼を素直に尊敬できない。迷って傷ついて後悔して、気が付けば僕らは後戻りできないほどこんがらがってしまった。ばかばかしいと誰かに笑ってほしい。
「どうすればいいの」
もはや笑いさえこみ上げてきて、すこし口元を歪めながら僕は彼に問いかける。

スレミク未完(TOZ)

「オレたぶんミクリオがいないと生きていけないけど、ミクリオはどう?」
急にこういう突拍子もないことを口にするのは、彼の欠点のひとつなのではないかと思う。しかも口説いているだとかふざけているだとかそういうものではなく本当に心から湧き出た疑問を投げかけているというところがたちが悪かった。これははぐらかしてもきっと食い下がってくるパターンだ。しかし、どう答えろというのか。
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