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スレミク(TOZ)

うーん、とスレイが新たな遺跡を前に思案の声をあげる。僕もスレイの隣に並んで、継ぎ目や質感からこれがどういう意図で作られたものなのかを自分なりに推理していた。そうしている間にも、うーんという声はやまない。
「うーん…」
スレイは顎に手を当てて熱烈に遺跡を見つめながら、じわじわと僕との距離を詰めてくる。そろそろ来るな、と胸中で呟いた。その予想どおり、スレイの両腕が後ろから僕の肩に回される。
「はぁ…」
ため息が耳にかかる。端的に言うと、僕は今スレイ後ろから抱きしめられている状態になっていた。まあ今さらこんなことで騒ぎはしない。むしろこれは、普段どおりの行動なのだ。
スレイは遺跡の考察に行き詰まると、なぜか僕を抱きしめる癖がある。いつからついた癖かは忘れたが、少なくとも最近の話ではない。昔から、わからない!と叫んでは僕を抱きしめ、そのまま思考の舟に乗り込んでしまうことが多々あった。しかし、こうなるたびに毎回僕は少し困っている。単純な話、身動きがとれなくなるのだ。
「ううん…」
スレイの考えはまだまとまらないらしい。そろそろ僕も新たな箇所を探索したいので、スレイの腕をぽんぽん、と軽く叩いた。後ろから「ん?」という間の抜けた声がする。
「いつまでそうしてるつもり?」
「え……あ、ホントだ」
またやっちゃってたな、とスレイは笑っている。気をつけてくれよと僕も笑って、スレイが離れるのを待った。けれど一向に回された腕が外されることはない。
「おい」
「うーん…もうちょっと待って。あとちょっとだから」
「……」
まだ思考がまとまらないようだ。ため息をつくが、スレイはそれをまったく気にせず考え込んでいる。本当にあとちょっとなのかは疑問なところだが、こうなったらもうスレイにとって納得のいく答えが出ない限り離れることはできないだろうから、仕方なくこの体制のままでいることにした。まあいい、目と手は使えるのだからじゅうぶん遺跡を調べることはできる。スレイの思い悩む声を耳元で感じながら、僕は遺跡の細部をじっくりと見ていった。
少しして、スレイが「そうか!」とはしゃいだ声をあげた。合点のいく結論にたどり着いたらしい。でもその間に僕も新たな発見を見つけたから、負けてはいない。
「ありがとな、ミクリオ!」
そう言ってスレイはようやく僕を解放した。今回はいつもより長かった気がする。スレイの体温がまだ体に残っていて、少しあつい。しかしどうしてスレイはこんな癖を身につけたのだろう。何かを抱きしめると頭が働くのか?
疑問をそのまま口にしてみると、スレイは頭を掻きながら照れたように笑った。
「うん、そうなんだよ。ミクリオのサイズと冷たさがちょうど収まりいいし頭冷やしてくれるし…」
聞き捨てならない単語が聞こえた気がするが今はとりあえず置いておいて、どうやらそういうことらしかった。なら、こうやって抱きしめてくるのは、僕だからということか。そう考えた瞬間胸にわきあがりそうになった気持ちを、咳払いをして追い払う。
どうしてかいつも、やめろとは言えない。たぶんこの先も言わないだろう。……彼のためであって、決して僕のためなんかではない。嘘じゃない。
「本当、君はしょうがないな」
「はは、おっしゃるとおりです」


途中で疲れた感バリバリで泣ける
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