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ジュルド(TOX2)

最近ジュードが気になる。とてつもなく気になる。そしてそのことで俺はものすごく心を乱されている。そう、ただ様子が気がかりだとか、そういう理由ならよかった。本当によかったのだ。しかし俺はジュードのことを、友人のジュードのことを、恋愛対象として気にかけているようなのだ。たまに見せる、男にしてはずいぶん柔い印象を相手に与えるその仕草、困ったときに下がる眉、控えめにあるきれいな唇、しかそれらに埋もれない強さを放つその意志など、何かもうとても、放ってはおけない。邪な意味で放ってはおけなくなってしまっている。いや、考えろ俺。ジュードは男だぞ?なんだかすごくかわいらしい時があったりもするが、れっきとした男なんだぞ?俺は自分がゲイだとは思ったことがないし、実質違うはずなのだ。町中で歩いているときに目が行くのも普通に女の子の方向だし、自室であれやそれするときも女の子の写真を使う。だからジュードへのこのときめきはおそらく、きっと、絶対、気の迷いなはずだ。やはりほら、あいつが放つ独特の中性的なような甘いオーラにあてられているのだろう、俺は。うん、そうに決まっているのだ。第一、仲間であり友人であるあの努力家の少年にそんなピンク色な思いを向けるだなんて間違っているのだから。あいつのためにも早く元の調子に戻らないとな。なんて自問自答の末の自己解決をするのは今日で5回目だった。何度も同じことを解決しているということは、つまり解決していないのだ。はあ、とため息を一つ吐いた。
「ルドガー」
そのとき、真横から声がした。心臓が跳ね上がる。あの声だ、俺を乱す渦中の友人の声。恐る恐るとそちらを見るとそこには俺をそっと見上げるジュードがいるではないか。ああ、足音とか、ぜんぜん気づかなかった。
ジュードは、何度も言うが上目遣いで、俺を心配そうに見ていた。ため息が聞かれていたらしい。案の定「大丈夫?」と声をかけられてしまう。心配してくれるのは本当に嬉しいのだが、申し訳ないことにお前は悩みの種なのだ。
「平気だよ」
微笑みながらそう言って安心させるためにジュードの目を見たが、その見上げる視線にまたときめきがせり上がってきてしまった。慌てて目を逸らすが、明らかに挙動不審だ。ジュードからこちらに向けられる心配もおそらくより強いものになっている。ああ失敗した。だめ押しで「本当に大丈夫だから」と伝えようと、逃げたくなる衝動を振り切ってまたジュードを見る。しかしちょうどその瞬間、自分の手に手が重なった。ジュードが俺の手を、慈しむようにさすっている。ルドガーは頑張り屋だから、なんて、母のように囁きながら。
「疲れることもたくさんあるでしょ?でも君はそれ以上に気遣い屋だから、仲間にはそういうこと絶対言わないよね。でも、本当につらいときは言ってほしいんだ。みんなで力になるから」
いや、とか、あの、とか言葉にもならない呟きたちが戸惑いながら口から出ていく。ジュードの目は真摯に俺を捉えていて、それはとてもきれいだった。直視できないくらい眩しいのに、どうしても目が離せない。そんな極限状態の俺に、極めつけの一言が投げられた。
「それに僕は、ルドガーのこと大好きだから」
大好きだから。だいすきだから。だいすきだから…。
時間が止まったかと思った。いや、心臓は止まったかもしれない。ともかく、俺は完全な自覚を手にしてしまったらしい。性別だなんて些細なことはもう悩みの範疇から逃れてしまった。好きだ。俺もお前が大好きだ。完全な下心を持って、そう断言できてしまえるのだ、俺は。
「ね?だから、一人で悩まないでね」
「僕たちは仲間なんだから」
けれどすぐに困ってしまう。そうだなあ、仲間だ。お前にとって俺はどうやら、大切な仲間でいられている。それを裏切るようなことが俺には出来そうにない。それにお前には大切な人がいるのだろう。勝てる気も何も、戦う気さえ起こらないほどの強くて勇敢な想い人が。早くも失恋かな、笑えないな。ハハハ。
「ありがとうな」
「ううん、何もしてないよ」
「いや、してくれたさ」
本当に、いろいろと。暗に込めて言葉を紡ぐと、ジュードは純粋に笑ってくれた。うん、困る。やっぱりかわいいのだ。
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