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ユキハル未完(つり球)

水族館という世界に触れるとき、魚が可哀想だという場にそぐわない感性を思考がからめ取るときがある。きれいな魚たちは回ったり跳んだりしてたくさんの生を俺たちに魅せるけれど、その生の範囲って人間によって限界まで狭められている。見せ物みたいに展示されて、ぶつかりかけながら箱のような庭を遊泳してさ。あのガラスの中から見たこちら側は彼らの目にどう映っているんだろう。そう俺は考えてしまうけれど、あいつらってなかなかどうして楽しそうに定められた世界を回っているときがある。可哀想だなんて大層な戯れ言を振りかざした俺にとって、それは不思議の対象だったのだ。なあ、おまえらってどうしてそんなに自由なふりが得意なんだよ。
そんな思想に溺れ尽くしていたとき、ハルは唐突に壮絶に俺のもとへやってきた。宇宙なんていう大海原に身を置いていたのに、自ら水槽に飛びこんできたっていうのだから驚きを覚える。それにはまあわりと深刻な事情があったわけだけれど、しかしながらあいつはこの空間をめいっぱい楽しみまくっていた。

主足(P4)

いつか死んだって愛してくれるとあなたは言ったことがあるんですよ。俺が死んだってあなたが死んだって世界の何もかも全部が死んだって愛すって。たくさんの不条理を吐きながらあなた風変わりな遺言を俺に託した。そうしてそのあと誰かが死にましたよね。あれは俺だったかあなただったかふたり以外のすべてだったか、なんだかうまく思い出せない。でももうそれは、そんなことはどうでもいいんです。問題はあなたが俺を愛すと言い放ったこと。あの日から俺の愛は弾け、形を変え、思わず目を逸らしてしまうような美しさへと成り下がったのです。気味が悪い安らぎの象徴、くすみ剥げかけた輝かしい冬?ああ、継ぎ接ぎだらけで素晴らしいですよ!それはもう本当に死んじゃいたいくらいに!俺は醜いあなたをただ愛していてただけなのに、ある日それがすべて無意味な希望へ繋がっただなんて滑稽な話じゃないですか。あのときのあなたは道化がお得意でした。例えば俺があの日あなたの銃で自ら死体に生まれ変わったとして、そうしてもあなた本当に俺を愛してくれたのかしら。わからないですね、なんにもわかりはしないですね?本当に愛してくれていたのなら、それはもう、嘘みたいに幸せだけれど。とにもかくにもあなたの愛が俺には凶器に見える。心臓にひんやりとした刀の切っ先を突きつけられているような気持ちになるんですよ。それくらい愛しているのか、それっぽっちの愛なのか。少なくとも後者は有り得ませんね。だって何年も何年もずっと愛してきた。今さらそれっぽっちだとか、冗談でも言えませんよ。…ああ、どこかで、女が喘いでいる。どこか悲しくなる音色ですね。もう声も掠れてしまっていて、聴くに耐えないくらい…。


「愛してたよ」
「嘘つき!」

あのとき君には言わなかったけれど、本当は僕ね、あの日のことを覚えていたよ。もう何もかも遠のいた、淡い昔の記憶としてちゃんと頭に残っている。確かに君が死んだって愛していると僕は言った。あの日の僕はとち狂っていて、君がかわいくて仕方なかったんだ。正常な思考回路がすべて死んでいた。でも、たとえ嘘だと言われようと狂っていようと、あのとき僕が君を愛していたのは残念ながら事実だ。はっきりと形を成した状態の愛は音を立てて僕の目の前に転がった。信じてもらおうだとかはべつに、そこまで思ってもいなかったけど。でもあのあと、僕は君が思い出せないという死人の正体になった。あれはちょっと困ったなあ。まさか終わらせられるなんて考えていなかったから。僕は確かに君をなめていたし、変な安心感をずっと抱いていた。まさかそんな、どちらも、殺す勇気を持ち得るまでのゲームには至らないだろうと。でも君はたくさんの涙を流しながら歯を食いしばって、僕を勢いに任せて殺したね。それでも死の直前に見えた目をひん剥いて鼻水垂れ流した君の顔は実はけっこう可愛かったよ。つまり僕は自分でも信じられないことに、命が途絶える一瞬間までは、ちゃあんと君の気味を愛していたのさ。おどろくだろうね、これは。嘘吐きだと言われても本当に仕方がない、僕だって嘘にしか思えないもの。

「嘘じゃない。確かに愛していたし、今だって君のことを嫌いじゃあない」
「…、信じられません」
「それでいいよ。信じなくていい」

信じられないのなら、わざわざ信じさせることもないさ。昔の僕は君にとてもひどいことをしたしね。それでも、友情も努力も勝利もすべて僕のために燃えかすへ変えてくれた君に、僕は少なからずの感謝を覚えていたりするんだよ。ああこれも信じられないか。ならそれでいいよ。ただ、僕は君を愛していて、今も嫌ってはいない。本当に、これだけは本当だ。もう一度殺されたっていいくらいには。あと、君が聞いた女の喘ぎの正体は、どうして死んでしまったのと泣き喚く君自身の声だよ。知らなくってもいいけれど。ああもう夕陽がジュネスの後ろに隠れているよ。君も僕もオレンジ色に染まっている。やっぱり、僕は君をまだ愛しているかもね。また女みたいに涙を零す君を見て漠然と想った。

小ネタ詰め

珍しい花を見つけたので摘んでみたらそれはあなただったってだけの話ですよ。つまり俺はあなたの首を興味本位で手折ってしまったわけですけれど、まったくうんざりするような話ですよね。と俺は少々長めの独り言を部屋の隅にあるそれに語りかけたのである。俺を見るそれは疲れたように笑った。
(主足)

番長「ふえぇ><」足立「おえぇ><」
(主足)

ルドガー「俺の兄さんが実はトマト界の妖精だった話はもうしたっけ?」エルちゃん「たまに喋ったと思ったらこれだよ」
(ルドユリ)

あなたに殺されるなら俺はいたって真面目な顔でメルヘンに殺されたふりをしてみせよう。魔法にかかったように糸を絶って霧のようにさらさら消えていくのだ。ああなんて素敵な愛の形だろう!そう語った俺に対し、足立さんは現実めいた嫌悪を吐いた。相変わらず君の言う愛って押し付けがましいね、って。
(主足/めるへん男)

「アイラブユーにこだわったりしなければ僕らはもっと短い人生の中で知らないものにまみれながら死ねたはずだよ」足立さんは全く似合わない台詞を文字通り吐いて、蜃気楼のように消えてしまった。今は言いそびれた幸せを舌の上に置いた俺だけがこの世界に佇んでいる。
(主足/足立さんによく似た愛)

「足立さんおはようございます」「」「え?もー朝から恥ずかしいこと言わないでくださいよ」「」「俺だって足立さんのことすーっごく大好きですよ」「」「足立さん最近口数減っちゃいましたね。寂しいなあ」「」「ごめんね」「」
(主足)

そう言って目を伏せた花井は次の日部活を辞めた。言い逃げとか主将のすることかよ、かっこ悪いやつになっちゃったな花井。花井はこれから予備校に通ったりして忙しくなるんだって。クラスも違うしもうあんま会えないかもね。オレも好きだってあのとき答えとけばよかった。花井もオレもバカだ。
(田花)

「ねえアルヴィン結婚して。わたしを撃った責任とってよ」「ジュードに見せつけるためか?」「…違うよ」「悪いけどそこまで都合のいい男にはなれない」「……」
(アルレイ/青い花パロ)

萎びたキャベツは足立さんによく似た表情を浮かべて俺のことを笑った。ように見えたが、どうやら幻覚だったようだ。そりゃあそうか。さて、今日の夜はこのキャベツと硬いレンコンを使って足立さんにお弁当を作ろう。
(主足)

「今日もきれいですね」あなたは美しいったら美しい。いつだってそうやって変わらないままで俺の傍にいてくれるんですね。毎日あなたが傍にいるだなんて、幸せ。ああ幸せだなあ。それじゃあ俺学校に行ってきますから、今日も待っててね。愛してるよ、本当ですよ。ふふ。
(主足/恋人はお漬け物)

夏樹「この前DUCKのカレー屋でカレー頼んだらスプーンがついてなくて、本格的なインドカレーの店なんだなと思って手で食ってたら後からアキラがすげえ申し訳なさそうな顔でスプーン持ってきた」
(コピペネタ)

アルレイ未完(TOX)

拝啓アルヴィンへ。お元気ですか?わたしは相変わらず元気です。前置きに書けることもないのでさっそく本題に入るね。実はわたし今度ひとりでエレンピオスに長期旅行することになったんだ!アルヴィンはいま仕事でエレンピオスにいることが多いって前の手紙に書いてたよね?もしかしたらそっちで会うかもしれないね。わたしのこと見かけたらちゃんと声かけてね!

とりあえずの行き先はトリグラフだと手紙には記されていたので、俺は自分でも驚くような素早さで荷物をまとめ汽車へ乗り込み一直線にそこへと向かった。ああユルゲンス、トリグラフの近くでの仕事に俺を配属してくれてありがとう。仕事仲間に勝手な感謝の意を述べ、車窓から見える愛着の根付いた街に想いを馳せる。ああ、もうすぐ到着だ。
あいつももうガキという一言で頭を押さえるには手が足らないくらいの年頃だとは思うけれど、正直俺の視界に映るレイアはまだ子供という括りの中の一端であるのだ。だかららしくないことは重々承知だが妙に不安を覚えてしまう。性格上空回りや無茶をしやすい娘だから特にだ。


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