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初めて夏樹と手をつないだ。風の冷たさが身にすり寄る秋の日のことだ。去年よく着た気に入りのセーターを纏う俺は、もういっそ半袖でもよかったんじゃないかなんていう無茶でばかなことをふと考えたりしてしまっている。だって、だって好きなひとと手をつなぐだけでこんな戸惑うくらいの熱が体に宿るだなんて思ってもみなかったんだ。指先が触れたときに走った電流にも似ている感覚は、この先なかなか忘れられそうにない。冷気にさらされていた夏樹の手は意外にもほんのりと熱を持っていて、筋張ってかたいそれはでも少し柔らかかった。夏樹は何も言わずただひたすらに歩いているだけだけれど、少し足を進める速度は速くなったかもしれない。俺はと言えば、恥じらいが荒波のように心のなかを打ち乱れるおかげで、夏樹の顔をきちんと見れずにただ俯いているのみだ。木枯らしがまたふたりにゆるりと寒気を運んでくるけれど、そんなものはもうなんともどうとも思えない。ああ汗さえかいているかもしれない、手とか、手とか、あと手とかに!