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ユキハル(つり球)

死ネタっぽい
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最近ハルの元気がない、気がする。態度こそいつもと変わりなくうるさいくらい元気なんだけれど、ごはんはよく残すし必要以上に眠るようになった。すこし心配になって体調悪いのかとある日問いかけたが、ちょっと渇いてきちゃってるだけだと思うから大丈夫と言ってハルは笑うだけだ。それならと、俺はハルに水をやった。庭のホースを使ってばしゃばしゃと。ハルは気持ちよさそうに目を細め、ユキありがとうと微笑む。その姿にほっと胸をなで下ろし、これでもう大丈夫だろうと顔を綻ばせた。でも次の日ハルはまた昼過ぎまで眠っていて、用意してあったごはんも半分しか食べていなかったので俺はさめざめと悲しくなってしまった。ごはんを食べるとまたすぐきれいに目を閉じて毛布を鼻まで被るハルを見つめ、なんだかもう恐ろしく暗い色をした感情を胸に持て余す。水が足りていなかったのかもしれない、そうだ、きっと昨日のあれじゃ足りなかったんだ。そう納得して浅く夢をみていたハルをやんわりと揺り動かし、手を引いて庭へ連れ出した。そうしてハルに昨日より多くの水をかける。ハルはふふ、なんて風に緩く笑みながら瞳を閉じてただじいっと佇んでいた。しばらくしたときハルの体がふらりと揺らいだので、とっさにその細い体を受け止める。俺の手の中でちいさく咲くハルの目を見て、なんだか無性にむなしくなった俺はハルをきつく抱きしめた。なんでだろうな、なんでだめなんだろう。そう呟くとハルは、ユキ、と聞いたことがないくらいの優しい声色で紡いで、俺の頬に手を添える。そしてばかみたいにきれいな顔でこんなことを口にするのだ。

「ほんとはずっとわかってたくせに」

大好きだったよ、さよなら。とハルは言って、そうしてすぐに俺の手の中から消えてしまった。後にはさみしい俺とちゃぷちゃぷと音を立てる水鉄砲だけが残った。


ハルちゃん人間より短命だったら悲しいなみたいな話
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