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兎折未完(TB)

あなたの首を絞める夢を見るんです。折紙先輩に面と向かってそう言われた。手の中に収めてある大小色とりどりの花束が風にあそばれてざわざわと音を立てる。レンズを通して彼をじっと見つめていると、厚い唇が開いた。毎日毎日あなたの首を絞める夢を見るんです。彼が零した言葉にはまたしても感情が籠もっていない。表情だって恐ろしいくらいに窺えなかった。本当になにもない。折紙先輩は紫色の瞳を花束に向けた。

「前まではこんなことたまにしかなかったのに、最近は来る日も来る日もその夢です」

僕は本能的に少し後退る。何かきっといまは、彼に近づいてはいけないときだと感じた。折紙先輩は特に動きを見せず、僕の前で伏し気味の瞳を花束に向けているだけ。それだけなのが逆に不気味で、気がつけば花を持つ手にぐっしょりと汗をかいていた。彼はほんのすこし、口角を上げた、はずだったが、まったく笑っているように見えない。ぬるい風が頬を撫でる。


どうしてこうなった
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