主足未完(P4)

「寂しくなっちゃったなあ」

河原で手首にスナップを利かせながら小石を投げる彼はいつもどおりに笑っていた。地べたに尻をつけるその人の隣に鎮座しているスーパーの袋の中には2つのカップ麺と同数のおにぎり、あとはキャベツ3個と半額のシールが貼られた豚肉。その数からして彼が独身だということは容易に想像できた。意外だったのは、どうやらこの人は自炊ができるらしいってこと。まさか生の肉を食べるわけではないだろうし、たぶん野菜炒めでも作るんだろう。3個のキャベツは総じてみずみずしい色をしていた。彼はキャベツ選びのプロか。

「何がですか」

新しい小石を探す足立さんの隣に腰を下ろす。

まどほむ未完(まどマギ)

鹿目さんは、とっても素敵な女の子だ。
低めの身長と大きい瞳は小動物みたいですごくすごく愛らしくて、甘くて優しい声とかとびっきりの笑顔なんかは私とは比べものにならないくらい魅力的だ。左右の髪を束ねている大きな赤いリボンと白いニーソックスは、彼女の柔らかい雰囲気の一端を担う役割を果たしていると思う。性格だって、誰に対しても分け隔てなく接することができて、とにかく優しくて。でも優しいだけじゃなく、芯は誰よりも強い。魔法少女である鹿目さんはいつも恐ろしい敵と命懸けで戦っていて、恐いはずなのにそんな様子を一切見せない。ほむらちゃんは私が守るから、って凛々しい目をして呟きながら弓を構える姿は他のどんな男の人よりもかっこよくて、つい見とれてしまうほどだ。その時ばかりは、私より小さいはずの鹿目さんの背中が大きく見える。でも、敵を倒したら『やったよほむらちゃん』と嬉しそうに笑顔を振りまきながらいつものように私を抱きしめて、そんな鹿目さんはやっぱり、可愛くて。学校の鹿目さんと、魔法少女の鹿目さん。可愛い鹿目さんと、かっこいい鹿目さん。どっちも素敵で、どっちも眩しい。私なんかには、釣り合わないくらいの女の子。どうしてこんな冴えない私と友達でいてくれてるのかが不思議で、でもそんなこと恐くて訊けない。もし、もしも鹿目さんが私と仲良くしてくれている理由が、私が思っているものと違ったとしたら。そう考えると不安で仕方なくなって、

「ほむらちゃん!」

明るく弾けるような声音が背後から降りかかる。聞き馴染んだ、大好きな友達の声。くるりと振り返ると、そこにはやっぱり鹿目さんが立っていた。下校時刻の知らせである鐘を響き渡らせる校内で鞄を持つ鹿目さんは、今から帰るところと見受けられる。ちなみに私もちょうど今帰路への道を踏み出したところだ。

「一緒に帰ろ!」

そう言って、鹿目さんは私に満面の笑みを見せてくれる。ぱぁ、という光が射してくるような擬音が耳を掠めた。太陽みたいな笑顔に負けないように、こっちもできるだけの微笑みを作って『うん』と頷いてみせたけど、たぶん鹿目さんの笑顔には及んでいない。だって向こうは太陽なんだもの、負けて当然だ。それに、勝ちたいなんて思わないもの。
私の了承を確認して、鹿目さんは小走りで隣に走り寄ってくる。私と拳一つ分くらいの間隔のところで立ち止まった鹿目さんは、『ほむらちゃんと帰れるの嬉しいな』と本当に嬉しそうな目をして私を見た。ああこんなときに決まって発症する私の赤面症。熱くなる顔を下に向けて、私も嬉しい、となけなしの勇気を活用して告げてみる。

「ほむらちゃんって、やっぱり可愛いね」

俯く私に、鹿目さんは柔らかい声音で、そう言った。ほむらちゃんって、やっぱり可愛いね。頭の中で鮮明にリピート再生される、唐突なその一言。

王泥喜とみぬき(逆裁4)

もういいんじゃないかなとあなたが言った。優しい顔つきでそう言った。これを言われたのは初めてじゃない。昨日パパが丁寧にゆっくりとこれまで起こったすべてを語ってくれて、それからわたしに言ったことば。そのときわたしはわたしがぜったいにしたくなかったことをしてしまった、つまりは泣いてしまったけれど、今はもう大丈夫だと胸を張って言える。もう泣いてもいいし無理もしなくていい、あなたはもう一度そう言った。わたしは大丈夫ですよといつもどおりに笑う。わたしの涙をおさめるところはまだあなたの胸じゃないの。まだわたしはパパの胸の中でしか泣けないの。ごめんなさいオドロキさん。オドロキさんはわたしを見てふわっと笑った。もう泣けたんだね、そう言った。見透かされてたなんて思わなかった。

「いつかはオレのことも頼ってくれよ」

はいと返事をしたらまたオドロキさんは笑うのでわたしも自然と笑顔になった。あなたにあえてよかったと心から思った。


この二人が好きすぎてつらい

主足未完(P4)

「やべ」

俺の足の間に鎮座していた足立さんが、ぽそりと呟いた。何がですか、と薄い黒の瞳を覗きこんだら、ぼさぼさ頭が俺の胸に押しつけられる。なんだろう、ちょっと様子がおかしい。まず普段は距離が極端に近いのをそれはもうものすごくこっちが泣きたくなるぐらい嫌がるのに、今日に限って自分から距離を詰めてくるのもおかしい話だ。話しかけてもなぜか上の空だし、さっきからまったく動こうとしないし。やっと起こしたアクションもこれだし。何か悩みでもあるんだろうか、面倒くさい人だから自分から悩みを打ち明けられないのかもしれない。いや、話したくないのかも。それなら無理に聞き出す気もないけれど、でもやっぱり少し心配だ。とりあえずそっと右手を彼の背中に回してみると、足立さんの右手も動きを見せた。彼らしくないほど控えめに、俺の服の裾を掴んだんである。なんというか、なんていうか。この湧き上がる気持ちの正体はいったいなんなんだ。

「あの、さあ」
「はい?」

ぽつり、降り始めの雨のように足立さんの唇から零れる言葉たち。たどたどしい物言いも、いつもとはまるっきり違っている。通常の全体的に憎たらしい物言いしかできない足立透はどこへやら、今はまるで告白をする女の子のように躊躇いがちに口ごもっている。

兎虎短文・会話文詰め(TB)

ずっと傍にいてください、死んでも傍にいてくださいって言ったらあなたはいつも僕の頭を撫でて「傍にいるよ」って笑うんです。でもねおじさんあなたが嘘つきなことぐらいお見通しなんですよ。だってあなた死んだら真っ先に奥さんのとこに帰るつもりなんだ。

「しょせん人なんて死んだらそれでおしまいなんですよ。あとはみんなから忘れられていくだけなんです。人なんてそんなものですしきっとそれが一番いいんですよ」「…死んだ奥さんを今でも好きなのはだめなのかねえ」
(RTネタ)

「おじさん」「どした」「つきあってください」「やだね」「なんで」「すきなひとがいるから」「そのひとはもうここにはいないんでしょ」「いなくてもずっとすきなんだよ」

「バニーちゃんって好きなやつとかいねーの」興味本位、といった体で彼が唐突にそんなことを問うてきた。勿論それに素直に答える気は更々ない。いませんよと返事をしたら彼が不満そうに口を尖らせる。あなたにだけは知られたくないんですとひとり呟いた。
(愛した人は僕しか知らない)

「支払いは僕に任せてください(バリバリ」「やめて!」

「支払いは私に任せてくれ!そして任せてくれ!(バリバリ」「おーありがとなスカイハイ」「僕のマジックテープ式財布はアウトで彼のマジックテープ式財布は許されるんですか!!!!ガッデム!!!!!」「こいつうるせえ」
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