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朝はにっがいコーヒーを2杯飲んで、毎度おなじみ電車の発車時刻にギリギリ間に合うか否かの時間に走って出勤。吊革とおてて繋いで、丹念にアイメイクを施す非常識なOLを見下げながらゆらゆら揺られて目的地へ。満員電車とさようならをしたら、あとは腕時計とにらめっこしながら足元に気をつけて全力疾走。しかしたまに転ける。ボロボロになりながらすいません遅れましたと署全体に響き渡るほどの大声で叫んだら、奥の事務机からひょっこり現れる堂島さん。
やめろって、何回も言ってんのに。いやだの一点張りで動かす手を止めることなんて知らないこいつをさてどうしてくれようか。じゃれあいと言ってしまえばそうかも知れない。知れない、けどさ。なんとなくやらしい手つきに感づいてしまえば、笑うこともできなくなってくるわけで。テントと毛布の下に潜む砂利が間接的に背中に痛みを与えるような、こんな場所でこいつは何を考えてるんだ。固定された両手が解放される見込みはないし、体を捻って逃げようとすれば背中に僅かな痛みが走って逃れようにも逃れられない。助けを呼べばいいのかもしれないが、こんな男同士でくんずほぐれつしている場面、できるなら見られるのは避けたい。それに何より、ヘルプを叫ぶ必要性はあまり感じられなかった。どうしてかは、なぜか俺もわからない。
僕は青春時代を借りてきた猫のように大人しく大人しく反抗もせず虫よりも小さく酸素を吸いながら過ごしてきたんだよ。君と違って将来の役に立ちそうもない数式の羅列を白い紙に書き綴って勉強がお友達とでも言うかのように問題集と見つめ合いながら細く細く二酸化炭素を吐いて生きてきたんだよ。君はこの前学年トップをとったらしいね、堂島さんから聞いたよ。あの人ね、嬉しそうに君の優秀さについて話すの。笑いながらそれに付き合う僕の口内は反吐の溜まり場と化してたよ。僕さ、君が勉強してるとこ見たことないんだけど。放課後はいつもお仲間たちと仲良く遊んでるよね?事件についていろいろ嗅ぎ回ってたりしてさ。でもそんなことばっかりしてるのにテストではひょいといい点とっちゃうんだ。君いつか死に物狂いで勉強してるクラスメートの誰かに刺されるよ。まあ安心してよ、その前に僕が君を殺してあげるからね。なんか君って見てるだけですっごい腹立つんだよね、なんでもそつなくこなしちゃって、いつも人に囲まれてて、青空がよくお似合いでさ。僕ね、そういう奴大嫌いなの。だからかなあ、この場所すっごい赤いでしょ。君に全然似合わないところをわざわざ用意してあげたんだよ。はは、こんなとこが死に場所になるなんて可哀想だねえ。でも君なんかより僕のほうがずっと可哀想さ。昔から勉強ばっかり強要されてやりたいことなんて全然できなかったし、やっと刑事になったと思ったらちょっとのミスでこんなド田舎に左遷されて。涙なしには語れないねほんと。そのへんの視聴率を意識してるのバレバレなドキュメンタリーよりよくできた不幸話だ。ほら、同情したでしょ?じゃあ同情がてらに死んでよ。お優しいリーダーくんならそれもできるだろ?ほら、ねえ、早く死ねよ!ああもう顔を見るだけで吐きそうだ!