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主花未完(P4)

「陽介はそんなに人殺しになりたいの」

唐突にそう言ったのは確かに目の前のこいつである。こいつであるんだが、どうもその事実を享受できなかった俺は返答を見送った。いつも冷静で穏やかで、俺が僭越ながら相棒の座に居座らせてもらってますって言いたくなるぐらいの完璧超人のこいつが、いきなりそんな物騒なことを言い出すんだからそりゃあ俺じゃなくても驚くだろう。転校三昧の人生だったからか人の気持ちには誰よりも敏感なこいつが、まさかそんな無礼発言をぶちかますなんて。なに、おまえの中ではもう無礼講の季節来ちゃってんの?春はまだ先だぞ?見ての通り俺だいぶ厚手のジャンパー着てるぐらいまだ寒いよ?あと無礼講っつっても無礼に振る舞っていいって意味じゃないからな。と、こいつは今お花見特有のはっちゃけ感を持ち合わせて無礼講大会気分にでも浸ってるのかと冗談半分いや冗談全部で考える。が、冗談にはすぐ飽きた。さて、そろそろ本格的に思考の回路を巡らせようじゃないか。そう思ったが、右や左から聞こえてくる老若男女の様々な声がどうしても耳に入ってきて気を逸らさせられる。ああ日曜のフードコートは苦手だ、ざわざわしてるのは嫌いじゃないけどこれは人が多すぎる。こんなちっさい町のどこからこんなに人が来るんだよ。さすが天下のジュネスと胸を張ることさえ億劫なんだから相当だ。というかわざわざこんな混雑した場所で、なんでこいつはさっきの台詞を俺に投げたのか。そこも疑問の一つだった。とにかく今は、こいつの考えてることが珍しくわからない。1年近くの間ずっと傍にいて、こいつのことはある程度わかっているつもりだったが、どうやらそれは自惚れだったのかもしれなかった。


花村が生田目をテレビに落とそうとしたことについて怒ってる番長を書きたかったはず

トム静未完(drrr!!)

びっくりした。それはもうびっくりした。心臓が止まりかけた。そんなにびっくりするようなことでもないのに、目ん玉飛び出しそうにさえなった。理由は、ただ、後輩の笑顔が思ったよりも可愛かったってだけ。中学時代にさんざん見てきた、むしろ中学時代のほうが無邪気で可愛らしかったそいつの久しぶりの笑顔が、こんなにも俺を驚かせる効力なんて持ち合わせていないはず。なんだが、20代男の笑みにしてはまあちょっと幼いかなと思うぐらいのそれに対して、こんなにも動揺している自分は確かに存在しているわけだ。それは変えられない事実であるわけだ。照れくさそうな、しかしながらやたらと嬉しそうな後輩の笑顔が、頭の中を巡回している。首の後ろを掻きながら、擬音で表すとにへら、といった風に。他愛もない日常会話での、ほんの少しの表情の変化。そこに揺さぶられる自分の網膜にはもはやクエスチョンマークを浮かべるしかないんだが。だが、真実を追うとすると、金色の髪が揺れて、グラサン越しに目を細め、口元を綻ばせた後輩はやっぱりなかなかどうして可愛いものだったさ。女から見たら『きゃあ可愛い』って叫びたくなるだろうぐらいには。
池袋の喧嘩人形、なんて呼ばれているこいつのこんな間の抜けた顔を知ってるやつなんて、ここらでは俺くらいのもんじゃねーのかとちょっとばかし自惚れるほどには。

「トムさん?どうしたんすか?」

はっ、と我を取り戻したときには、目前にあった後輩の不思議そうな表情。なんだか知らんが照れくさくて、1、2歩後ずされば、今度は後輩が驚く番だ。目を丸く見開いたかと思えば、だんだんと表情を曇らせていく。曇天色の後輩の顔は土砂降り5秒前で、それでも歪な笑みを貼り付けている。だがその虚勢は、次に発する俺の言葉次第ではトランプタワーのようにいとも容易く崩れ去ってしまうだろう。やばい、今のはまずかった。どうやら怖がられたとでも思ったらしい。

「お、俺、なんかしました…?」
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