もうそろそろ忘れたよ

声も顔も匂いも体温も

忘れたつもりで過ごしてるよ


信じたのに嘘だとわかって
それでも一緒にいることを選んだのはわたしだった
「わたし以外」がいることは気づいてた
でもどうでもよかった
目の前のあのひとが、一時だけでも
わたしを見ていてくれる限り
なんでもよかった


わたしは知らなかったあなたの誕生日付近、
会うことになって抱きしめてくれたけど
近くのケーキ屋さんの紙袋が部屋の隅に落ちているのに気づいてたこと、知らないでしょう



どんな甘い夜だったのか知らないけど
結局わたしともそんな夜が過ごせちゃうんだから
きっとあのひとにとってなんの意味もない

それが分かってたからどうでもよかった



だけど同時に、
わたしという存在もあのひとにとっては数ある中の一つで
飽きないための「今日はこの子」だったんだって思い知らされて

だけどそう思うには心を通わせすぎたし
あのひとはわたしを大事にしすぎた

どうせわたしなんて、と
もしかしたらわたしは、を行き来して


そんな娯楽みたいに抱かないでほしかった
そんな簡単に好きなんて言わないでほしかった
どうでもいいなら誰でもいいなら
わたしじゃなくてもよかったのに
冷たく手放して最後まで都合よく扱ってくれたらよかったのに


ほんとは全部全部言いたかった
感情に任せてあなたを困らせてやればよかったね


こんなふうに何人泣かせてるの

「ずるい」なんて言葉が似合うひとだった

しょうがなかった
他の人なんて霞むくらい最低で素敵だった



もう忘れちゃったからね
忘れたつもりでいるからね



出会った頃の、ぬるい夜風ふく季節が巡ってくる






.