時の音




届かない声がある
耳の奥まで聴こえたって
山の彼方まで聴こえたって
心まで届かない声がある

何で届かないのかな?

少年は声にならない声を
探す旅に出ました

「世界ってこんなに広くて
いろいろな言葉を持っていて
心はたった1つなのに、
なんだか面倒だなあ」

あの国とその国が同じ
言葉を持っていたら、
もしかしたら喧嘩だってしないのに
みんな一生懸命守るものがあって、
だからみんな一生懸命
声を届けようと叫んで
でも、それがわからないから、
あそこで今日も喧嘩が始まってる

「声なんて届かなくていいから、
もっと笑ってほしいな
あそこで喧嘩している人たちも、
どうか笑ってくれないかな」

哀しくなった少年の眼から
涙がこぼれて落ちました
掬おうとして下を向くと、
そこに1つの丸いものが落ちてました

少年はそれを胸にかけました
なんだかわからなかったけど、
胸にかけると勇気がわいたからです
そして、その「笛」に、
おもいっきり息を吹き込みました

木々はざわめき、喧嘩は止まり、
みんな我に返って目を輝かせながら
笑いかけてくれました
少年は笛が壊れるまでずっとずっと
息を吹き込み続けました

やがて笛は壊れてしまい、
音も出なくなりました

さらに少年の喉は枯れて
声も出なくなってしまったけど、
それでもみんな笑ったり
踊ったりしました
ありったけの力をこめて、
自分の気持ちを鳴らすように
なったからです

ずっとずっと、武器が壊れたりしないと
喧嘩が終わらないと思ってました
ずっとずっと、笛がないと
誰も踊らないと思ってました
ずっとずっと、涙は大切な人の
笑顔を曇らせると思ってました

でももう、なにもなくたっていいよね
言葉も、涙も、もう邪魔じゃないよね
疲れ果てた少年は、夢の中で
息を吸いながらずっと笑ってます

「泣いてるんじゃないよ、
鳴いてるんだよ」って




06/12 17:17
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