△やさしい日と△
『 春に芽吹いた新芽さんたちが元気に背を伸ばす、日差しの眩い初夏のころ。
小さなパン屋さんにやってきた、新しいお客さま。
お仕事の帰りなのでしょうか。ちょっぴりくたびれたスーツと緩んだネクタイ、でも、疲れなど吹き飛ばすような笑顔がとても印象的な人でした。
その人は一度きりではなく、たまにの夕暮れ時、自転車のベルを鳴らしてここへ来てくださいます。
選ぶほどもないパンたちを、「おいしそうだね」と手に取ってニコニコしながらお買い上げ。
「こんにちは」「いらっしゃい」
「お疲れさま」「ありがとう」
そしてほんの少しの間だけれど、交わす言葉はあたたかく、わたしの心は癒されるのでした。
今日も、もしパンを買いに、…お会いすることができるのならば、お尋ねしたいことがあります。
――名前…
「あなたのお名前は?」と。
それから、もうひとつ、―― 』
←
ToP
→
にほんブログ村
-エムブロ-