話題:怖い話
若い頃、私には多少の霊感があった。
でもハッキリ見るのは稀で、気も強かった私は霊なんかに負けない!と、霊に対しても気の強さを発揮していた。
しかしホントは人一倍怖がりなので、内心ガクブル。ただ私は、あまりに怖いと逆ギレするタイプだったのだ。
そんな私が人に助けを求めることは、ほぼなかった。
それに、そんなに怖い目にあったことがなかったから。
そう、あの日まで…

私は朝がすこぶる弱かった。
まあ夜中まで遊んでいたり、勉強したり、小説を書いたりしていたから当然か。
まあ、その頃は悪夢障害以外の睡眠障害はなかったし。
そんな私は、その日も朝遅くまで惰眠を貪っていた。
しかし、急に金縛り。
私は、またか…(ーдー)と思い、無理矢理、金縛りを解いた。そしてまた寝ようとすると、また金縛り。
気が強い私は、そこでカチンときた。
こっちは眠たいんだ。眠らせろ!
そこで私は、目を開けた。怒鳴り付けてやろうと思ったのだ。いつもなら、こっちが強気なら、大抵、退散してくれる。だが、その日は違った。
宙には、恐ろしく怒りの形相をした顔が浮かんでいた。
ヤバイ!
私は咄嗟に、そう感じた。
が眠さは変わらない。しかし、ここにいてはダメだ。
私は飛び起き、自分の部屋を足早に抜け出し、起きていた母に『こっちで寝かせてくれ』と頼んだ。母は驚きながらも理由を聞いてきた。私は今見たことを素直に答えた。母は、それを聞くと両親の部屋で寝ることを承諾してくれた。時間は朝の8時だったと記憶している。
それから私は軽く両親の部屋で寝た。
そして恐る恐る自分の部屋に戻ったが、そこにはもう何もいなかった。
私は、何事もなかったように仕事と学校に行った。(当時、家は貧乏と聞かされていたので、私は昼間は仕事で夜学に行っていた)
学校帰り、ちょっと憂鬱だったが。
私はその日は真っ直ぐ家に戻った。すると母がこう言った『もう安心して寝れるわよ。連れていってもらったから』と。
実は母も霊感があるのだ。どのくらいの霊感かは知らない。
まあでも大丈夫と言うから大丈夫なのだろう。私が部屋に戻ると、なんか空気が違う気がした。
そして私は寝た。多少は怖かったが寝た。
次の日、確かに金縛りは起きなかった。
しかし私はそれ以来、霊に強気に出ることを止めた。もう怖い思いは、懲り懲りだったから。
そして月日が経ち、いつの間にか私から霊感は消えていた。
今は心底、ホッとしている。
あったって良いことないよ、霊感なんてさ。