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せんせいのあさ(「アノリミア」ss)+
「...」
夜も遅くまで、持ち帰ったカルテ書類の整理をしていた君は、休憩がてら身を沈めたソファーでそのまま眠ってしまっていたようで、ハッと気が付くと朝になっていた。
目を細めて壁掛けの古い振子時計を見ると、時刻は7時半頃。
今日も病院へ、医師として行かねばならない。
立ち上がり、うーんと背伸びをして凝り固まった体をじんわりと緩める。
そらから、腰を手をやって左右にゆっくりと回した時、君は、机の上の、本や書類や筆記用具の占領から守られた一角に、目が止まった。
まるで、気付いてと言わんばかりに、カーテンの隙間から差し込む朝日が、そこだけを照らしていた。
君は、右手を腰から離し日の光の差す方へと伸ばす。そして、そこに置かれた写真立てに触れて微笑んだ。
「おはよう」
閉めていたカーテンを勢いよく開け、朝日を部屋いっぱいに迎え入れる。光で溢れた部屋は白く、心も晴れていくように感じた。
「いってくるよ」
君は微笑みをそのままに、必要な物を両手に抱え、部屋を出ていった。
机の上の、あの一角の写真立て。
そこにいる、あの子。
君の朝は、あの子への「おはよう」からはじまる。
あの子は、あの時と変わらぬ無邪気な笑みで君を見送るのだ。
「アノリミア」
先生の朝
ついき
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