2024.3.13
川上未映子『ヘヴン』
イジメ描写がキツくて胸糞悪いという評判を聞いていた影響もありずっと積んでたんだけど、ようやく読んだ。
確かに終始陰惨なイジメ描写が続くものの、イジメがテーマの小説と言うよりイジメという設定で書かれた信仰と哲学の話という印象。
斜視が原因で(少なくとも本人はそう思ってる)イジメられてる主人公。
わざと不潔な格好をしてイジメられてて、主人公を仲間と呼ぶコジマ。
イジメグループのナンバー2的な立ち位置ながら直接的には何もしてこず無関心そうにしてるだけの百瀬。
全ての事に意味があり全てを受け入れて耐える弱い自分達こそが本当は強くて正しいと言うコジマ(信仰)
全ての事に意味も善悪も無く原因が無くとも欲求と偶然により理不尽は訪れると言う百瀬(哲学)
という対比。
コジマは主人公の大切な友達ではあるけれど、自分が最大の理解者だと言って来る癖に主人公が斜視を治す手術の話をすると裏切り者扱いするし終盤は狂信者に見える。
百瀬はイジメの加害者側の発言としては詭弁でしか無く胸糞悪いものの、そのフィルターを外して発言だけを切り取るならこちらの方が芯を食った事を言ってるなと思ってしまう自分がいる。
「それぞれ区切られた自分の世界で生きているから他人の気持ちなんて分からない。娘をAV女優にさせたく無い父親もAV女優の父親の気持ちなんて考えずにAVを見てる」
等、とことん虚無的。
最後は主人公が自分で自分の選択をした事と、その後押しをした義理の母親の存在が救い。
読むのが辛いけど読む度に発見がありそうで時間を置いて読み返したい一冊。