エソラゴト

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夜の国のクーパー[読書日記]


目を覚ませば見知らぬ土地にいた、という展開は「オーデュボンの祈り」を思い出す。

今作はそれに似た雰囲気の、ファンタジーらしさのある物語だった。

語り手が猫なので、いつもより可愛らしい文章になっている。

語り手が人間でないっていうのは「ガソリン生活」を思い出す。

あれは車が語り手だった。 

猫が語り手なので、普段私達が目にする猫の行動、例えば欠伸や鼠を追いかける行為だったりが、猫本人(本猫?)がどう感じて、どう思ってそういう行動を取ってるかが分かって面白い。

なるほど、彼らはこんな感覚でいたのか、と。
まるで作者が猫を体験したことのあるような表現の仕方なのがすごい。

例えば、小説の70ページあたりに猫のトムとギャロが鼠を見つけ、追いかけるシーンがある。

−−−−−−−

全身をびりびりと痺れが走る。歓喜だ。鼠を追う僕の体内を、歓喜の震えが駆け巡る。
何も考えられない。あるのは、昂ぶりだけだ。自分が液状の不定形の存在になったかのような感覚に襲われる。
頭の中が、自由と万能を謳歌している。
足を力いっぱい動かし、駆ける。
血液が全身を駆け、快楽が手足の先まで行き渡った。
(省略)体が融け、水になり、滑っていく気分だ。

−−−−−−−

こういう表現がすごいなぁって思う。
この感覚を猫になって体験してみたい。


この物語には他にもクーパーの兵士や鼠が登場する。

鼠が猫に、「もう襲うのをやめてほしい」と要求し、条件を提示するあたりや、クーパーの兵士の制度の仕組みなんかは戦時中の政治の仕組みってこんな感じだったのかもしれないと思わされる。

私は政治には詳しくないけれど、もしかしたら今もこういう手法が使われているのかもしれないなと思うと、物事を見極める目と考える頭を鍛えておかないといけないなと思う。

詳しい内容は書くとネタバレになっちゃうから、読んでみて欲しい。

政治って、国ってこんな感じで国民を誘導しているのかなって思う。



15.4.12 15:32 Sun / comment 0


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